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2019年11月14日

中宮伸二郎社労士の「労務の心得」46・退職手当支給方式の併用(2)

Q 労使協定方式で退職手当制度方式と退職金前払い方式を併用することはできますか。

 退職手当制度方式、退職金前払い方式それぞれの対象者を分けることは可能です。局長通達(職発0708第2号)では、退職手当制度について以下の条件を設けています。

・全ての協定対象派遣労働者に適用されるものであること
・退職手当の決定、計算及び支払の方法(例えば、勤続年数、退職事由等の退職手当額の決定のための要素、退職手当額の算定方法及び一時金で支払うのか年金で支払うのか等の支払の方法をいう。)及び退職手当の支払の時期が明確なものであること。

nakamiya03.png 「全ての協定対象労働者に適用される」とは、労使協定で退職手当制度を適用することとした協定対象労働者全員に適用されていれば良いとされていることから、一つの労使協定で2方式を併用することは差し支えないと考えられます。具体的には、有期雇用派遣社員は退職金前払い方式、無期雇用派遣社員は退職手当制度方式とすること、従事する職業分類ごとに退職金前払い方式と退職手当制度方式の適用を定めることが考えられます。

 2方式を併用する場合、同一の派遣社員に適用される方式が変更される場合の取り扱いをあらかじめ検討しておく必要があります。有期雇用派遣社員を前払い退職金方式とし、無期雇用派遣社員を退職手当制度とする場合、有期雇用から無期雇用に転換する際に精算の問題は生じませんが、逆に無期雇用から有期雇用に転換する際には、退職金を転換時に支払うか、退職時に支払うのか検討が必要です。

 一般的に無期雇用から有期雇用に転換することは滅多にないと思いますが、業種ごとに適用する方式を定めている場合は、頻繁に発生する可能性があり、その場合は退職手当制度を適用される期間の通算方法についても検討する必要があります。


(中宮 伸二郎/社会保険労務士法人ユアサイド 代表社員)

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