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2020年2月20日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」8・新型コロナウイルスへの対応

Q 新型コロナウイルスが猛威を振るっていますが、事業所としてどんな点に気を付ける必要がありますか。

koiwa1.png 新型コロナウイルスについては、2月18日に厚生労働省から「 新型コロナウイルスに関するQ&A 」が公表され、適宜更新されています。事業者や職場が留意すべき点が簡潔にQ&Aに示されていますので、一度は目を通しておきたいものです。

 留意点として、一般的な衛生対策として職場における「咳エチケット」の徹底や、中国湖北省に滞在していた労働者が帰国して2週間の間に不調を訴えた場合には、保健所に連絡した上で医療機関を受診させることなどが求められています。

 2月1日付けで指定感染症として定められたことにより、労働者が感染している場合には、感染症法に基づいて都道府県知事が就業制限や入院勧告などを行うことになります。ただし、労働安全衛生法第68条に基づいて病者の事業者が強制的に就業制限を行うことはできません。

 新型コロナウイルスに感染して知事による就業制限を受けた労働者が休業する場合は休業手当を支払う必要はありませんが、労働者が新型コロナウイルスかどうか分からない時点で自主的に休業する場合は基本的に通常の病欠と同様となります。ただし、一定の症状があることにより使用者の判断で労働者を休業させる場合は、基本的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、休業手当を支払う必要があります。

 また、新型コロナウイルスに感染している疑いのある労働者について、事業主が一方的に年次有給休暇を取得させることはできませんので、万が一そのような状況が発生した場合は注意しなければなりません。

 感染防止や感染者の看護などに対応する労働者については、労基法第33条第1項の「災害その他避けることができない事由」に該当するとされています。ただし、あくまで「必要な限度の範囲内」に限り認められるとされ、過重労働による健康障害を防止するための措置が求められることになります。

 直接的に新型コロナウイルスへの対応が求められる事業所は一部だと思いますが、予防的措置の意味も込めて必要な情報収集に努めていきたいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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