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2020年3月12日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」11・令和2年1月14日公表版の労使協定(イメージ)⑥

Q 労使協定方式の「退職手当」については、どのような点に注意して参考にしたらよいでしょうか。

 退職手当については、以下のような条項例が記載されています。

①退職金前払いの方法をとる場合の記載例
②中小企業退職金共済制度等への加入の方法をとる場合の記載例
③中小企業退職金共済制度等への加入の方法をとることにしているが、一般基本給・賞与等の額の6%の額とならない場合の記載例
④退職一時金の費用を「中小企業退職金共済制度等に加入する場合」で見る場合の記載例
⑤退職金の支払いの方法を労働者の区分ごとに使い分ける場合の記載例

koiwa1.png 退職手当については、(1)退職金制度、(2)退職金前払い、(3)中退共等への加入の3方式があります。通達では「労働者の区分ごとに(1)から(3)までを選択することも可能」とされ、「一人の協定対象派遣労働者について、(2)及び(3)を併用することが可能」とされています。上記の③は一人の協定対象派遣労働者に(2)(3)を併用する方法、⑤は労働者の区分ごとに使い分ける方法に対応しています。

 やや複雑なのは、「③中小企業退職金共済制度等への加入の方法をとることにしているが、一般基本給・賞与等の額の6%の額とならない場合の記載例」です。この例では、中退共の掛金月額が4%以上となるよう設定し、その金額と6%との差額を通達による合算による比較方法で対応するとしています。

 通達では合算による比較が可能なのは、(2)退職金前払いの場合に限られるとされているため、この規定例のケースでいえば(1)退職金制度と合算することはできません。退職手当の3つの選択肢のうち、(2)(3)は費用(掛金拠出)なのに対して、(1)は支給額という違いがありますので、注意したいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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