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2020年4月16日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」16・新型コロナウイルスと厚生年金保険料の猶予制度

Q 新型コロナウイルス感染症の影響により事業の継続が困難になった場合等は、厚生年金保険料の猶予制度があると聞きました。具体的にはどのような制度ですか。

koiwa1.png 新型コロナウイルス感染症の影響で、事業活動が悪化するケースが全国的に出てきています。最悪の場合は税金や社会保険料の納付が困難になることもあるかもしれません。

 厚生年金保険料等を一時に納付することにより事業の継続が困難となるおそれがある場合は、一定の要件によって保険料等の分割納付が認められることがあります。これを「換価の猶予」といいます。

 納付すべき保険料等の納期限から6か月以内に管轄の年金事務所へ申請することで、換価の猶予が許可されると1年以内の期間に限り、保険料等の分割納付が可能となり、猶予期間の延滞金の一部が免除されます。

 換価の猶予の対象となるのは、以下のような例です。

①財産について災害を受け、または盗難にあったこと
②事業主または生計を一にする親族が病気にかかり、または負傷したこと
③事業を廃止し、または休止したこと
④事業について著しい損失を受けたこと
⑤各種届出が遅延したことにより、過去の月分に係る保険料が発生したこと

 新型コロナウイルス感染症の影響による場合は④に準じた例に該当しますが、「著しい損失」とは、「申請前の一年間において前年の利益の額の2分の1を超える損失(赤字)が生じた場合とされています。

 猶予の申請を行うためには、原則として猶予を受けようとする金額に相当する担保(土地、建物、国債、有価証券、保証人の保証など)が必要となりますが、特例制度が成立すると猶予期間中の担保の差し入れも不要となる見込みです。

 新聞やテレビでも報じられていますが、新型コロナウイルス感染症に関連して特例が予定されていますので、概要は押さえておいてもよいでしょう。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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