コラム記事一覧へ

2020年10月 1日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」40・労働局による派遣事業所への調査

Q 派遣事業所に対する労働局からの調査には、どのようなものがありますか。また、最近の調査の傾向などを教えてください。

koiwa.png 秋は行政調査の季節です。労働局はもちろんですが、労働基準監督署やハローワーク、年金事務所でも各地で多くの調査が行われます。派遣事業に対する労働局(需給調整事業室)による調査は、大きく分けると、許可申請や更新申請時の調査、定期調査、派遣労働者などの申告による調査の3種類があります。調査というと、許可申請や更新時には許可基準を満たしているかどうかについて厳しい実地調査が行われるため、そうした光景を思い浮かべる人が多いかもしれません。

 定期調査は文字通り事業所に対して定期的に行われるものですが、派遣契約書や就業条件明示書、管理台帳などを中心に派遣事業の基本的な運営状況について確認されるのが一般的です。派遣法は法改正が多いことから、今年4月から施行された派遣労働者の同一労働同一賃金などの取り組みもチェックされることになります。

 最近の調査の傾向としては、基本的な業務運営や改正法対応はもちろんですが、目下のコロナ禍による影響から派遣労働者の雇用を守ることが急務となっているため、例年以上にそうした国策ともいえる目線に力点が置かれています。具体的には、厚労省の方針によって、「派遣労働者の雇用の維持・確保」に重点を置いた調査が各都道府県労働局で強化されています。現場で問われる傾向が強いチェックポイントとしては、以下のような項目が挙げられます。

・派遣労働者の解雇や契約解除の有無
・上記がある場合は具体的な実情
・派遣契約更新の現状(今後の目途)
・派遣労働者の雇用の維持・確保に向けた取り組み

 このような傾向は全国的にみられますので、例年の調査のポイントに加えていずれにも的確に対応していくための普段からのコンプライアンス遵守が大切だといえるでしょう。現に派遣労働者の解雇や契約解除がある場合には、相当の誠意と準備を持って臨む必要があるといえます。

 余談ですが、筆者が労働局の調査の立ち合いなどに従事していると、派遣事業所の経営者や担当者は、行政と融和を図るのがうまい人と行政対応に苦手意識を持つ人に分かれます。派遣元と労働局は広い意味では「派遣事業を通じた雇用の確保」という共通の目標を共有していますが、事業者と行政という立場の違いがあり、ともすれば誤解や行き違いも起こり得る関係にあります。社労士が両者の橋渡し役を果たす場面もありますが、それぞれが「共通の目標」に向けて立場を超えて尊重し合う姿勢を大切にしていきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

PAGETOP