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2021年2月 9日

【ブック&コラム】『もののけの日本史』

日本人は「物の怪」が好き?!

c210126.jpg著者・小山 聡子
中公新書、定価900円+税


 新型コロナウイルスの国内感染が広がって人々の不安が高じるととともに、どこからともなく出現した妖怪アマビエ。あっという間に"コロナ除け"のマスコットとなり、厚生労働省の感染確認アプリ「COCOA(ココア)」にも採用されるなど、お上の"お墨付き"まで得た。科学万能の現代にあっても、日本人の妖怪好きが改めて浮き彫りになった。

 本書は、そんな日本人の"怖いもの"好きの歴史を解き明かそうという野心作。「震撼する貴族たち」から「西洋との出会い」まで、時代ごとの5章で構成し、古代から現代までの文献を中心に膨大な資料を丹念に拾っている。

 当然のことながら、文中には死霊、怨霊、妖怪、幽霊、化け物、物の怪といったおどろおどろしいモノたちが大活躍する。古代・中世では正体不明の恐ろしい存在だったが、時代を経るに従ってその性格を変質させ、最後は怪談など娯楽の対象にまでなって現代に生き延びている。ジブリ映画「もののけ姫」はその代表であり、大ヒット漫画「鬼滅の刃」に登場する多くの「鬼」たちも、広い意味でこの延長線上に位置するものと考えられる。

 本書は古文書などの分析が中心になっていることから、学術的な記述も多く、親しみやすい内容とは言えないが、日本人の時代心理を知るには格好の一冊。「巣ごもり読書」にお勧めだ。(本)

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