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2021年2月 2日

【ブック&コラム】「上級国民」の醜態

 新型コロナウイルス対策の実効性を高めることを目的に、感染症法と特別措置法に罰則規定を盛り込んだ政府・与党の改正案だったが、泥縄の対応に身内の不祥事が重なって、罰則規定は大きな後退を迫られた。この間の国会のスッタモンダを見ていると、危機感のない「上級国民」の醜態をさらけ出したとしか思えない。

c200908.JPG 原案では、国民がコロナ入院を拒否したりした場合は懲役刑か罰金刑、営業の時短営業命令に従わない店舗などには過料を科すことにしていた。しかし、短期間の法改正が必要なうえ、野党や世論の反対が強いことから、与党は懲役刑の削減ぐらいは譲るつもりでいたという。ところが、ここにきて与党議員の"夜遊び"がバレたことから、批判はさらに強まり、最後は罰金刑も引っ込め、過料額も"下方修正"に追い込まれた。お粗末!

 改正案の土台になる厚生労働省の感染症部会が1月15日に交わした議事録を読むと、罰則規定に対する否定的な意見の多かったことがわかる。厚労省はそれを承知で当初の改正案を出したが、これでは審議会で議論などする意味はない。議事録からは、感染症抑制のために刑事罰を設けることが、人権擁護の観点からいかに重大な問題であるかがひしひしと伝わってくるが、政権側にそうした認識はないまま「会食」に精を出していた。

 法曹界や患者団体などからは、過料にも反対する意見が今も相次いでいる。それだけ大きな問題であり、野党からは感染の第1波が来た当時から、根本的な議論が必要との声が上がっていたにもかかわらず、政府・与党は無視し続けた。今回の騒動はそのツケが回ってきたに過ぎないが、立法機関としての機能劣化がここまで進んでいたことにタメ息しか出て来ない。(俊)

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