Ｑ 厚生労働省から「派遣労働者の待遇改善に向けた対応マニュアル」が公開されたと聞きました。具体的には、どのような内容でしょうか。
Ａ ３月１日、厚生労働省から「派遣労働者の待遇改善に向けた対応マニュアル」が公開されました。派遣労働者の同一労働同一賃金については、すでに「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル（労働者派遣業界編）」が公開されていますが、こちらは公正な待遇を実現するための考え方と具体的な点検・検討の手順が解説されたものです。かなり網羅的ですが１００ページ以上というボリュームもあって、馴染みにくい印象を受けた人もいるかもしれません。
今回の「派遣労働者の待遇改善に向けた対応マニュアル」の方は、派遣元に対する調査や事例収集の結果に基づいて派遣労働者の待遇改善をはかるための施策やノウハウがまとめられたものであり、派遣元が直面する「困りごと」とそれへの対応策が場面ごとにコンパクトに整理されています。１ページごとに完結する分かりやすい構成であり、全２４ページのボリュームですので、派遣実務の経験が浅い人でも読みやすいといえるでしょう。
本マニュアルの構成は、第１章「派遣労働者の待遇を決める上での困りごと」、第２章「待遇決定における困りごとへの対応策」ですが、第１章で「困りごと」の類型が紹介され、第２章でテーマごとの対応策について触れられています。具体的には、以下の内容となっています。
| 取組場面 | 主な困りごと | |
| 労使協定方式 | 派遣先均等・均衡方式 | |
| 過半数代表者の選出手続き | ・立候補者が現れず代表者を選出できない ・代表者を決めるための投票が過半数集まらない |
－ |
| 比較対象労働者の情報提供 | － | ・派遣先の情報が不十分で、待遇を検討できない |
| 派遣先との派遣料金の交渉 | ・派遣先に料金交渉の必要性を適切に説明することが難しい ・派遣料金の引き上げに応じてもらえない |
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| 派遣労働者に対する待遇内容等の説明 | ・待遇決定の仕組みを派遣労働者に説明することが難しい ・賃金見直しに対する派遣労働者の不満を解消できていない |
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| 待遇決定とその運用 | ・各人の業務の内容や能力を待遇に反映させる仕組みができていない ・派遣先によって評価基準が異なり統一した基準で評価ができない |
・派遣先の人事評価結果の妥当性を判断できない |
上記のように「派遣先との派遣料金の交渉」「派遣労働者に対する待遇内容等の説明」は労使協定方式、派遣先均等・均衡方式共通の項目となっていますので、いずれにしても直面するテーマです。これらの「困りごと」について完璧な答えを持っている人は少ないと思いますので、ぜひ実務に向き合う上でのヒントにしていきたいものです。
（小岩 広宣／社会保険労務士法人ナデック 代表社員）
