コラム記事一覧へ

2021年5月18日

【ブック&コラム】『ザ・ラストマン』

V字回復のキーマンは何をしたのか?

c2104_3.jpg著者・川村 隆
KADOKAWA、定価990円(税込)


 69歳の時、700億円の巨大赤字を抱える日立製作所の社長を要請され、「ラストマン」になる覚悟で引き受けたという著者。その後5年間で最高益を記録するまでにV字回復を遂げた舞台裏を当事者目線で明かしている。

 ラストマンとは最終意思決定者を意味する造語で、最後に責任を取ろうとする意識のある人だとされる。「社内にお仲間を作って話し合いだけやっていても変化は起きない」と断じ、「自分がやるしかない」と覚悟を決めた人材を求めてやまない。社長の立場は業績を伸ばす専門職だと割り切り、稼ぐ力にこだわる合理性と行動力を強調している。記述内容では、やはりV字回復の戦略とアクションに迫力がある。窮余の策で公募増資を打ち出したが、それゆえ株価が大幅に下落。海外機関投資家から容赦のない質疑を浴びつつ、信じる幹部らと世界同時説得工作を進める緊迫の10日間はドラマのようだ。

 ラストマンの5つのプロセス(①分析、②予測、③戦略、④説明、⑤断固実行)もノウハウにあふれ、リーダー研修の事前課題にぜひ推したい1冊。


(久島豊樹/HRM Magazine より)

PAGETOP