Q 労働安全衛生法でストレスチェックが義務づけられていますが、派遣労働者についてはどのように実施すべきでしょうか。
A ストレスチェック制度は、定期的(1年に1回以上)に労働者のストレスの状況について検査を行う制度であり、労働安全衛生法66条の10(心理的な負担の程度を把握するための検査等)により、事業者に実施が義務づけられています。この制度は、労働者への検査結果の通知を通じて、自らのストレスの状況についての気づきを促し、メンタル不調のリスクを低減させるとともに、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげることによって、労働者がメンタル不調になることを未然に防止することを目的としています。
現在は常時50人以上の労働者を使用する事業場が対象となっていますが、この場合の「労働者」には、パートタイム労働者などのほか、派遣先で就業している派遣労働者ももちろんカウントに入れる必要があります。具体的には、以下の者が対象とされています。
ストレスチェックの対象者となる「常時使用する労働者」
・1週間の労働時間数がその事業所において、同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上である者
常時50人未満の事業場については、「当分の間、努力義務」とされてきましたが、2025年5月14日公布の「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」の成立により、50人未満の事業場についても実施が義務となりました。ただし、施行期日については「公布後3年以内に政令で定める日」とされ、準備期間が設けられています。
ストレスチェックにおける派遣元と派遣先の役割については、以下のように整理することができます。
①派遣元が実施するもの
ストレスチェックの実施主体は雇用主である派遣元であり、基本的にはストレスチェック全般(派遣労働者に対するストレスチェック、医師による面接指導、就業上の措置)の実施における実施義務を負います。派遣元は、ストレスチェックの実施にあたって、必要に応じて派遣先に協力要請を行うことになりますが、この場合はあらかじめ派遣労働者本人の同意を得る必要があります。具体的には、面接指導に必要な情報(労働時間や勤務状況など)の提供を依頼する場合、派遣労働者に対して就業上の措置を講じる場合などが該当します。
派遣元から派遣先への依頼(契約による委託)により、派遣元の負担で派遣先が実施するストレスチェックを派遣労働者に受けさせることは可能ですが、この場合は、事業者への結果提供の同意、派遣先の実施者から派遣元への結果通知、結果の保存・管理などについて、派遣元と派遣先との間で明確な役割分担と取り決めを交わすことが必要となります。派遣労働者にとっては、就業先でストレスチェックを受けることができるメリットがある反面、円滑な実施にあたっての派遣元、派遣先の信頼と連携が必須だといえるでしょう。
②派遣先が実施するもの
法律上の努力義務とされている、ストレスチェックの集団ごとの集計・分析(集団分析)については、派遣先が実施することが望ましいとされています。集団分析は、職場単位で実施することが重要だといえ、派遣先における派遣労働者も含めた一定規模の集団ごとにストレスチェック結果を集計・分析し、その結果に基づいて必要な措置を講ずることが求められます。
派遣元が適切に義務を果たすためには、派遣元からの協力要請を踏まえて、ストレスチェックの受検や医師による面接指導のための時間の確保、勤務状況に関する情報提供、就業上の措置(労働時間短縮など)について、派遣先が協力する必要があります。また、派遣労働者の就業上の措置の実施にあたっては、派遣元と派遣先との連携に際して、派遣元は、派遣労働者の契約更新の拒否など不利益取り扱いにつながることのないよう、次の点について十分に配慮する必要があります。
・就業場所の変更、作業の転換等の就業上の措置を実施するためには、労働者派遣契約の変更が必要となるが、派遣先の同意が得られない場合には、就業上の措置の実施が困難となるため、派遣先の変更も含めた措置が必要となる場合もあること。
「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、派遣労働者が現在の仕事や職業生活に関して強いストレスと感じている内容で最も多い回答が、雇用の安定性です。労働者派遣という雇用形態のなかで、派遣労働者が心身ともに安心して働ける職場環境を整えるためには、派遣元と派遣先の双方が互いに役割を理解し、連携することが不可欠です。ストレスチェックを契機として、派遣元と派遣先がしっかり協力し合って、派遣労働者一人ひとりに寄り添った支援体制を整え、さらに健全な職場環境を目指していきたいものです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)






















