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2021年9月28日

【ブック&コラム】『新型格差社会』

コロナが炙り出した格差を考察

c2106000.jpg著者・山田 昌弘
朝日新聞出版、定価825円(税込)


 「新型コロナウイルスは、人と人が接する社会のあり方を著しく変えた」と看破する著者は、コロナ禍が日本社会に潜んでいた種々の格差を顕在化させたと指摘する。具体的には、①家族、②教育、③仕事、④地域、⑤消費の5つの分野を考察。下層での影響がより深刻で、かつ、コロナ収束後もそれ以前には戻れない予感が国内に蔓延し始めていると分析する。

 一例では、"夜の街"が封鎖され、ステイホームを強いられたことで、夫婦間のバランスが崩れ、女性の自殺が増える因果を洞察する。また、リモートワークの影響では、PCを開き英語で会議をしている親の姿を目にする子と、Wi‐FiもPCもなくオンライン授業に参加できない子との間に生じる教育格差を問題視する。リモートワークでは成果の出せる人が評価され、人間関係で何とかしてきた人は脱落する構造にも格差を見出している。

 格差が長期化し、世代を超えて固定化していく階級社会を警戒する著者は、まず目の前の格差を認め、その分断を多様性で埋めていく試みが必要ではないかと提案している。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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