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2021年9月 9日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」88・アンコンシャスバイアスとは?

Q 最近、「アンコンシャスバイアス」という言葉をよく聞くようになりました。人事や労務管理の現場でも活用できる考え方だと思うのですが、具体的にはどのようなものですか。

koiwa1.png 「アンコンシャスバイアス(unconscious bias)」という言葉を、新聞やインターネット上でもしばしば目にするようになりました。「無意識の偏ったモノの見方」のことをいい、「無意識の思いこみ」や「無意識の偏見」とも表現されますが、人間のものの見方や考え方、価値観などは過去の経験や見聞きしてきたことに影響を受けるため、自分では意識しないうちに他人にある特定のイメージを持ったり、何気なくどんな傾向にある人なのかを決めつけてしまう自分がいたりします。関西出身の人を面白くておしゃべりな人だと思ったり、血液型で何となく相手の性格を想像したり、意識していなくても男性は〇〇、女性は××というイメージでとらえたりしてしまうのがそれです。

 アンコンシャスバイアスはどこにでもあふれているのが普通で、誰にでも自然にあるものですから、それ自体には良し悪しはありません。しかしながらこの傾向が強くなりすぎてしまうと、無意識のうちに部下を色眼鏡でみてレッテルを張ってしまったり、同僚との何気ない会話の中で相手のことを決めつけて傷つけるようなことが起こり、職場の人間関係もギスギスしたものになってしまいます。パワハラやセクハラなどのハラスメントの多くは、こうした相手に対する思い込みや理解不足から起こっているともいわれています。現場の管理者は、メンバーたちがアンコンシャスバイアスの視点からみてどんな心の状態にあるかに目配せしていく努力も大切だといえるでしょう。

 アンコンシャスバイアスを正確に知り、自分の心の変化に対応していく方法として、「アンコンメモ」があります。これは毎日の仕事や生活の中で、「もしかしたら自分の思い込みだったかも?」と感じたことをメモしていくというものです。気になったことを記録していくと、意外にもたくさんのメモがたまっていくことも多いものです。労務トラブルやハラスメントが起こりがちな職場で管理職の方に実践することをおすすめしていますが、今までの社内の慣例や世間の常識といったものを無意識のうちに基準とするあまり、個人の個性を理解する眼差しが欠けたり、少しでも周囲と異なる表現や言動をとる人を異端扱いしてしまう例も少なくなく、改めて気づきがあったという声も聞きます。

 余談ですが、筆者も今年から一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所の認定トレーナーとして活動していますが、アンコンシャスバイアスに対する社会的な関心は相当に高まっており、社労士として実務の現場でアドバイスを行う場面でも側面支援としてお役に立てていると感じます。あくまで一つの試みに過ぎませんが、事例として参考にしていただければと思います。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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