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2021年11月30日

【ブック&コラム】『「日本型格差社会」からの脱却』

成長を取り戻すための政策提言に注目!

c2108000.jpg著者・岩田規久男
光文社、定価1078円(税込)


 2013年から5年間、日銀副総裁を務めた著者による経済政策論。今ある格差社会はデフレに起因しており、どの国も経験していない「日本型」と呼ぶべき特殊性があるとの認識を示す。ゆえに、政府・日銀の役割は「デフレからの完全脱却に尽きる」と立場は鮮明だ。

 各論ではまず、①所得格差、②正規・非正規の固定格差と相対的貧困(氷河期世代・母子家庭)、③年金世代格差(相続財産)、④世代間格差(老人福祉と若手の所得配分)という4つの断層を分析。その過程では、1人当たりGDPベースで「1990年以降の30年間で日本は信じられないほど貧しくなった」と算出し、現政権のコロナ対策の鈍さにも影響していると指摘する。一方、再生のための政策では、雇用分野への言及が大きく、女性の労働参加率引き上げ、雇用契約の自由化、職業訓練等の積極的労働市場政策の推進を提案している。

 統計数値を読み解く考察ながら、読者は退屈している暇はないはずだ。著者と接点のあった政治家たちの言動も生々しく、有権者目線で参考にしてもよさそう。


(久島豊樹/HRM Magazine より)

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