コラム記事一覧へ

2022年3月 8日

【ブック&コラム】『会社がなくなる!』

組織と働き方の大転換期を読み解く

c2112001.jpg著者・丹羽 宇一郎
講談社、定価924円(税込)


 伊藤忠商事の社長・会長、在中国全権大使等のキャリアを歴任してきた著者は、実践で培った経営哲学、歴史観・世界観と、マクロ経済動向を背景に、ポストコロナ時代の経営論を本書に考察している。世界規模で産業界の栄枯盛衰が起き、近年はそのスピードが激しさを増し、ギグ・ワーカーたちが個人で世界とビジネスを進める動きも捉え、「会社」の概念が大きな転換期を迎えていると見ている。世界中で消費者や若者がこれまでの資本主義を支持しなくなってきた兆候も視野に、会社は「誰のものか」ではなく「誰のためにあるか」と問い直す。

 翻って日本の現状では、「あらゆる指標が国力の衰えを示している」と厳しい。そもそも産業構造が大人数の社員を必要としなくなったと確信し、分散化(中小企業化)が進むと予測。さらに改革を阻むネックに「タテ型社会の病弊」を指摘し、入社年次・上座下座・前例踏襲の馬鹿さ加減を辛辣に批判する。再生の希望では人材力とりわけZ世代に期待を寄せ、彼らに好きにやらせる組織の度量を訴えている。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

PAGETOP