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2022年4月 7日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」117・成人年齢引き下げと派遣元責任者

Q 4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられますが、派遣元責任者への影響はありますか。

koiwa1.png 4月1日から民法改正により成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。成人年齢が変更されるのは明治9年の太政官布告で成人年齢が明記されて以来140年ぶりですから、大きな歴史の転換点だといえるでしょう。

 派遣元責任者は労働者派遣事業の許可要件でもあることから、「雇用管理を適正に行い得る者が所定の要件及び手続に従って適切に選任、配置されていること」(業務取扱要領)が求められていますが、具体的には、欠格事由に該当しないことのほか、成年に達した後、3年以上の雇用管理の経験を有する者、派遣元責任者講習を受講した者であること、住所・居所が一定しない等生活根拠が不安定なものでないこと、適正な雇用管理を行う上で支障がない健康状態であることなどを満たす必要があります。このうち「成年に達した後、3年以上の雇用管理の経験を有する者」とは、具体的には以下のいずれかに該当する者であることが求められています。

①成年に達した後、3年以上の雇用管理の経験を有する者
人事・労務の担当者(事業主、役員、支店長、工場長など労基法の管理監督者を含む)
労働者派遣事業における派遣労働者・登録者などの労務の担当者
②成年に達した後、職業安定行政・労働基準行政に3年以上の経験を有する者
③成年に達した後、民営職業紹介事業の従事者として3年以上の経験を有する者
④成年に達した後、労働者供給事業の従事者として3年以上の経験を有する者


 派遣元責任者は、「成年に達した後、3年以上の雇用管理の経験を有する者」であることが求められますので、成人年齢の引き下げによって要件自体は引き下げとなります。上記のように「雇用管理の経験」は相応にハードルが高いものですが、実務的には①に該当するケースが多く、この場合、「労働者派遣事業における派遣労働者・登録者などの労務の担当者」であった期間が該当することからすると考えると、少なくとも規定上は成人以降3年を迎える21歳程度の責任者が選任される可能性もあり得ると考えられます。

 派遣元責任者の法律上の責任の重さや多岐に渡る職務内容からすると、それ相応の職務経験や専門知識、社内におけるキャリアなどが求められることになりますが、スタッフ部門の年齢層が若い派遣元や若手を抜擢して登用したいと考える場合などは、もしかすると人選や配置などへの影響も出てくるかもしれません。多様な働き方やキャリアのあり方が求められる時代、年齢や性別、それまでの経験や資格などを超えた個性や可能性と柔軟に向き合っていくひとつの契機にもしたいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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