賃上げか減税か――。7月の参院選を控え、政府・与党と野党の攻防が激しさを増している。野党側は物価高対策として濃淡ありつつも「消費減税」を叫ぶのに対して、与党側は「実質賃金のプラス転換」を柱に据える。国民生活の「手取りを増やす」方向では同じだが、手法の違いが際立っており、どちらが「正解」なのか国民の判断が注目される。(報道局)
国民生活が向上しているとは言い難い。連合によると、2024年の平均賃上げ(定期昇給とベースアップの合計)率は5.10%と1991年以来の5%台の伸びとなり、今年も6月2日時点では5.26%となり、最終的に昨年以上の伸びとなるのは確実だ。
それにもかかわらず、労働者の賃金は伸び悩みが続いている。厚生労働省の毎月勤労統計によると、名目賃金は2~4%のプラスが40カ月続いているが、消費者物価の伸び率を差し引いた実質賃金は4月まで4カ月連続のマイナス。24年6月と7月、11月と12月だけプラス転換したものの、いずれも一時的現象に終わり、今年1月からマイナスに戻っている。生活の向上度を測るには実質賃金の方が重要であり、22年から3年連続のマイナスという、国民生活には逆風が吹き続けている。
国民生活を直撃した「令和のコメ騒動」
連合が誇る「大幅賃上げ」にもかかわらず、実質賃金がプラス転換しないのは、賃上げ効果が大企業や労組のある企業に限られ、中小・零細企業まで賃上げの恩恵が届かないため。連合の集計でも従業員300人未満の企業の場合、賃上げ率は24年で4.45%、25年でも4.70%となり、大手との格差が拡大している。雇用者の約7割が中小企業にいることを考えると、中小の賃上げ率が物価上昇率を上回らない限り、全体の実質賃金もプラス転換する可能性は低い。
そこで登場するのが「手取りを増やす」方法だが、その手法には賃金を上げるか、税金・社会保険料を減らすかしかない。野党側は、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した輸入インフレによる物価高騰が国民生活を脅かしていると主張。日常生活で最も消費の障害となっている消費税の減税、撤廃を公約に掲げる。
立憲民主党は食料品の消費税率を来年4月から1年間ゼロとし、それまでのつなぎとして国民1人あたり2万円の「食卓おうえん給付金」の支給を盛り込んだ。減税は時限付きで、財源として外国為替資金特別会計の剰余金などで賄う。日本共産党は将来的な廃止を目指し、まず税率を一律5%に引き下げ、財源は法人税率の引き上げなど「富裕層への優遇」をやめて賄うとしている。
また、国民民主党は一律5%に引き下げ、引き下げ部分の財源約10兆円については赤字国債の発行など「あらゆる財源」で賄う方針。日本維新の会は食料品の課税を2年程度撤廃し、財源は税収の上振れ分を充てる方針という。
国民感情を考慮すれば、物価上昇への対応にかなり疲れているところへ、最近はコメ価格の高騰が追い打ちを掛けていることもあり、消費減税には敏感に反応する可能性が高い。しかし、減税と財源問題がセットになっていることもかなり理解が深まっており、...
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