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2022年6月 9日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」126・令和4年の労働保険年度更新

Q 今年も労働保険の年度更新の時期になりましたが、令和4年度は雇用保険料の変更などによって例年とは手続きが異なる部分があると聞きました。具体的にはどのような点に留意すべきですか。

koiwa1.png 令和4年度の労働保険年度更新は、年度途中の10月から雇用保険料率が変更となることから、4~9月と10~翌年3月のそれぞれの賃金総額見込みに、各期間に適用される雇用保険料率を掛け合わせて、概算保険料を算定しなければなりません。具体的には、令和4年度の賃金総額の見込み額が、令和3年度の賃金総額と比較して2分の1以上2倍以下の額となる場合には、令和3年度の賃金総額の2分の1の額を4~9月、10~翌年3月の賃金総額とすることになります。雇用保険被保険者の1年間の賃金総額の1/2の額にそれぞれの料率を掛け合わせて、雇用保険の概算保険料を算出すると理解すれば分かりやすいでしょう。計算の流れを理解するために、一例を以下にご紹介します。

令和4年度 労働保険料の計算例

例)1年間の賃金総額 78,083千円

労災保険分
78,083千円 × 3/1,000 = 234,249円

雇用保険分
78,083千円 ÷ 2 = 39,042千円(端数切り上げ)+ 39,041千円(端数切り捨て)

計算方法
① 令和4年4月1日~9月30日 料率9.5/1000
39,042千円 × 9.5/1,000 =370,899円

② 令和4年10月1日~令和5年3月31日  料率13.5/1000
39,041千円 × 13.5/1,000 =527,053.5円

370,899円 + 527,053.5円=897,952円(端数切り捨て)

① +②=897,952円→令和4年度の雇用保険の概算保険料となります。

労働保険料
234,249円(労災保険分)+ 897,952円(雇用保険分)= 1,132,201円


 なお、複雑な年度更新の実務を簡素化するための補助ツールとして、厚生労働省から「年度更新申告書計算支援ツール」が公開されています。エクセルシートには、①継続事業用、②雇用保険用、③建設事業用の3種類がありますが、建設事業などの2元適用事業の業種を除いて継続事業用のシートを使うことになり、こちらで雇用保険料も労災保険料も計算することができます。

 令和4年度は、雇用保険料率が4~9月と10~翌年3月で変わる年度となるため、新たに「概算保険料(雇用保険料)算定内訳」という欄が設けられています。賃金集計表を入力してこの項目を選択すると、それぞれの期間に対応する雇用保険料が自動計算される機能となっています。雇用保険料の変更による計算はやや複雑なため、確実なチェックという意味でも支援ツールを効果的に利用したいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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