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2022年8月11日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」135・女性活躍推進法による男女の賃金格差の開示①

Q 女性活躍推進法の改正で、男女の賃金格差の開示が求められるようになると聞きましたが、具体的にはどのような制度ですか。

koiwa1.png 経済協力開発機構(OECD)の2020年調査によると、日本の賃金水準の男女差は22.5ポイントであり、韓国(31.5ポイント)、イスラエル(22.7ポイント)に次いで大きいとされ、国際的にもジェンダーギャップの解消の必要性が叫ばれています。そのような状況を改善する方策のひとつとして、女性活躍推進法の改正によって「男女賃金の差異」の情報公表が求められることになり、7月8日に具体的な方法が盛り込まれた厚生労働省令が施行されました。

 今回の改正で対象となるのは労働者が301人以上の規模の事業主であり、施行後に最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に公表することが求められます。公表に当たっては、他の情報公表項目と同様に、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」や自社ホームページの利用その他の方法により、求職者等が容易に閲覧できるようにすることが求められています。

 公表は、「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の3区分で行うことになります。「全労働者」は「正規雇用労働者」と「非正規雇用労働者」の合計、「正規雇用労働者」は期間の定めなくフルタイム勤務する労働者、「非正規雇用労働者」はパートタイム労働者や有期雇用労働者のことをいいます。派遣労働者は派遣元事業主において算出し、派遣先の事業主の算出対象の非正規雇用労働者から除外します。個々の事業主の判断で、さらに詳細な区分を用いて、例えば4区分、5区分に分類して公表を行うことは差し支えありません。

 なお、本社と複数の支社がある場合は、本社およびすべての支社のデータを積み上げて算出することになります。例えば、本社(東京)、大阪支社、名古屋支社がある場合は、あくまで法人単位で算出することになるため、それぞれの事業所の規模に関わらず、すべての事業所の数字を合計して算出することになります。逆に、拠点ごとに子会社化して運営していたり、ホールディングスなどの持ち株会社が存在する場合は、グループ企業などの連結単位で算出するわけではなく、あくまでそれぞれの法人単位で算出して公表することになります。公表内容の算出や集計には一定の時間と労力がかかるケースも多いと思われますので、早めの対応に心掛けていきたいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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