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2022年12月22日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」154・ウーバーイーツ配達員の労働者性

Q ウーバーイーツ配達員が労働法上の労働者だとする判断が下されたと聞きましたが、具体的にはどんな内容ですか。

koiwa1.png ウーバーイーツの配達員(パートナー)の不当労働行為救済申立事件についての東京都労働委員会の命令書が、11月25日に交付されました。結論としては、ウーバーイーツの配達員は労働組合法上の労働者に当たるため、同社(および関連会社)が労働組合からの団体交渉の申し入れを正当な理由なく応じないことは団交拒否に該当するというものです。

 ウーバーイーツと配達員との関係は、あくまでウーバーイーツのサービスのプラットフォームを利用する利用契約であり、会社と会社員との関係のような雇用契約ではありません。したがって、労基法に定められた労働時間の規制や有給休暇などの労働者の権利は、配達員には適用されません。ところが、同じ「労働者」という言葉であっても、以下のように労働者性をめぐる定義・概念は法律によって異なります。

労働基準法 第9条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。) に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

労働契約法 第2条第1項 この法律で「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。

労働組合法 第3条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。


 労働組合法は労基法や労契法とは異なり、「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことにより労働者の地位を向上させる」(第1条)ことを目的としています。使用者との交渉における地位を得る立場という視点から判断されるため、労基法などよりも広くカバーされており、労基法では労働者に該当しなくても、労働組合法では労働者だというケースも見られます。

 労働組合法上の労働者に該当するかどうかは、①事業組織への組み入れ、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性、④業務の依頼に応ずべき関係、⑤広い意味での労務提供・一定の時間的場所的拘束、⑥顕著な事業者性の点からみて、総合的に判断されるとされています。これらの各要素について、東京都労働委員会は次のように判断しました。

①事業組織への組み入れ 労働者性が認められる
②契約内容の一方的・定型的決定 労働者性が認められる
③報酬の労務対価性 労働者性が認められる
④業務の依頼に応ずべき関係 × 労働者性は認められない
⑤広い意味での労務提供・一定の時間的場所的拘束 ○(広い意味での労務提供は認められる) 労働者性が認められる
×(一定に時間的場所的拘束は認められない) 労働者性は認められない
⑥顕著な事業者性 × 労働者性は認められない


 これらの点から総合的に判断して、ウーバーイーツの配達員は労働組合法上の労働者に当たるとされました。したがって、ウーバーイーツと労組法上の使用者に当たるとされた関連会社は、ウーバーイーツの労働組合との団体交渉の申し出に応じる義務があり、それに応じないと団交拒否に該当することになります。

 ウーバーイーツのようなプラットフォームを提供してビジネスを行う例は配達業務に限らずさまざまな業種業態で広範に認められることから、今後はその利用者が実態として労組法上の労働者に該当するかどうかという点についても慎重に判断して対応していくことがより求められることになります。

 利用契約・委託契約だと判断されるためには、契約書の様式・内容や名刺・名札などの利用、報酬の計算・支払などについて、労組法上の労働者だと見なされない実態を備えていることが必要となりますので、心配な人は事業内容や契約関係について第三者的なチェックを受けることをおすすめします。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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