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2023年12月14日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」205・労働条件明示のルール変更について③

Q 令和6年4月からの労働条件通知書の明示項目の追加のうち、更新上限に関する事項にはどのように対応すべきでしょうか。

koiwa1.png 労働条件の明示事項のルール変更により、令和6年4月から更新上限の明示と更新上限を新設・短縮する場合の説明が義務づけられます。有期労働契約の更新に関する改正点であることから、契約社員やパートタイマー、アルバイト、嘱託社員、派遣労働者などの有期契約労働者が対象となります。

①更新上限の明示事項について
 改正後は、有期労働契約の締結と更新にあたって、更新の上限がある場合には、労働条件通知書(雇用契約書)でその内容を明示しなければなりません。「更新の上限」とは、通算契約期間または回数の上限のことを指します。「通算契約期間」とは、いわゆる「5年ルール」とも称され、同一の使用者と労働者との間で、「有期労働契約」が反復更新されている期間のことをいい、有期労働契約を2回以上結ばれており、通算の労働契約が5年を超える場合が該当します(労働契約法18条)。これらに更新回数や通算年数の上限を設ける場合には、あらかじめ契約(更新)時にその旨を明示しなければならないというルールになります。

 具体的には、「契約の更新回数は3回までとする」と上限回数をうたったり、「契約期間の上限は3年間とする」と上限年数を設定することになりますが、いずれも労働契約の締結時のみならず、更新時にも同じく明示を行う必要があります。

②更新上限を新設・短縮する場合の説明事項について
 ①更新上限を新たに設ける場合、②更新上限を短縮する場合は、それらを実施する前の段階で、更新上限を新設・短縮する理由を労働者に説明しなければなりません。具体的には、文書の交付や面談などによって説明を行うことが考えられますが、複数の労働者が参加する説明会などの実施によっても構いません。

 すべての該当者と個別面談などを行うことが困難な場合は、説明会を開催して人事担当者などが詳細を説明する方法が考えられますが、法令上は書面による交付が求められていないとはいえ、労働者が不安を抱えることを避け、のちのちの労使間のトラブルや紛争を防ぐ意味でも、具体的な更新上限の内容については記録が手元に残る書面で確認することが望ましいでしょう。

 労働契約を締結した段階では更新上限がなかったものの、契約期間の途中で更新上限を新たに設ける場合には、あらかじめ更新上限を新設する理由について労働者に説明を行った上で、契約更新時の労働条件通知書において更新上限の内容について明示しなければなりません。更新上限条項を就業規則で定める場合は、就業規則の条項を新設したり、変更することも必要となります。

 労働条件通知書(雇用契約書)における更新上限条項は、そのルールが適用される前から雇用されている労働者への効力がなく、雇用継続の合理的期待が生じる可能性を考慮すると、同時に就業規則においても確実な規定を置くことが望ましい点にも留意したいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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