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2024年1月11日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」209・能登半島地震被災に関する対応について①

Q 能登半島地震の被災状況が深刻化していますが、被災に関連する労働・社会保険分野の行政対応には、どのようなものがありますか。

koiwa24.png 令和6年の元旦に発生した能登半島地震は、北陸地方を中心に大きな人的・物的被害をもたらし、今まで経験したことのないような痛ましい新年となりました。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げ、亡くなられた方々に心よりご冥福をお祈り申し上げます。いまだ余震が続く中で行方不明となられた方の捜索や被災地の復旧は困難をきわめていますが、今回の地震被災に関する労働・社会保険分野の行政対応としては、現在公開されている概略として、以下のものが挙げられます。

令和6年能登半島地震の被災に関する労災診療費等の請求の取扱いについて(基補発0105第1号、令和6年1月5日)

自然災害時における労働基準関係行政の運営について(基発0922第5号、令和5年9月22日)

自然災害時の事業運営における労働基準法や労働契約法の取扱いなどに関するQ&A(令和6年1月5日)

日本年金機構「被災したとき」

協会けんぽ「保険証がなくても医療機関を受診できます」

 これらの通達や行政からの情報の範囲は多岐に渡りますが、主な項目としては以下のものが挙げられます。

・被災にともなって保険証を紛失などした場合であっても、医療機関の窓口で、氏名、生年月日、勤務先の事業所名を申し出ることで、保険証がなくても受診できる
・被災により診療録などを滅失、棄損した場合の労災診療費などについては、簡略な手続きによる特例請求書による特例請求が認められる
・賃金が未払いのまま退職を余儀なくされるなどした労働者に対して、未払い賃金の立替払事業が実施される
・住宅、家財などの財産が2分の1以上の損害を受けたときは、申請に基づいて国民年金保険料が免除となる
・財産に相当の損害を受けて納付すべき社会保険料の納付が困難となった場合は、事業主の申請に基づいて、保険料の納付猶予を受けることができる場合がある
・被災した事業主からの申請に基づいて、労働保険料の納付猶予措置等を受けることができる場合がある
・所得があるために年金の一部または全部が支給停止されている人が、被災によって住宅、家財その他の財産が2分の1以上の損害を受けたときは、申請に基づいて一定期間の支給停止を行わない
・天災事変などの不可抗力の場合は使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務は発生しないが、①その原因が事業の外部より発生した事故、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故の2つの要件を満たす必要がある
・災害による施設の被害は「経済上の理由」とはならず雇用調整助成金の支給対象とはならないが、災害や復旧の長期化などの場合に、交通手段の途絶などにより原材料の入手や製品の出荷が困難となり、事業所が損壊し修理業者の手配や修理部品の調達が困難となったことなどにより、事業活動の縮小が行われた場合は、「経済上の理由」に該当し助成金の対象となる可能性がある


 以上はあくまで一部の概要に過ぎませんが、情報収集や手続き簡略化などの参考になりましたら幸いです。大変な年初となりましたが、私たち一人ひとりができることに前向きに取り組むことで、少しでも明るい方向になる努力をしていきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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