健康を維持し生涯現役で働くために
著者・吉田 英司
かんき出版、定価1980円(税込)
医学部卒業後、外資系コンサルティングファームに参画し、現在は産業医のポジションから企業・団体の健康経営を支援する著者が、病気の知識と予防法を解説する。
健康と勤労の関係を専門的に扱う立場から、脳梗塞・心筋梗塞・高血圧・糖尿病の4つを要注意の疾病に挙げ、健診結果の受け止め方をレクチャーしてくれるので、読者はセカンドオピニオンを受けている感覚で前のめりになってしまう。労働安全衛生法が定める「月80時間」という残業基準の医学的意味、 1日9時間以上座りっぱなしだと死亡リスクが高まるといったトピックも緊張感を覚えずにいられない。メンタル不調では、回復過程での旅行や趣味活動の効果を認めつつも休職は「自由に休める権利」ではなく「解雇の猶予期間」だと指摘し、論の運びはあくまで働き続ける前提で一貫している。
土日に仕事を持ち帰った人の生活描写などリアリティも抜群で、働く人の事情を知り尽くした説明ゆえ刺さるポイントは多い。健康と両立させながら生涯現役で働く"腹の括り方"まで諭してくれる内容だ。
(久島豊樹/HRM Magazine より)