勤労者が突然死・自死すると......
著者・今野 晴貴
文藝春秋、定価1155円(税込)
長く労働相談の現場に身を置いてきた著者が、過労死・過労自死の"その後"を描く。勤労者の突然死・自死が起きたとき情報不足から沈黙するしかない遺族と、狡猾な対応に走る企業とを対比させ、そもそも遺族が労災申請に動かないと、単に病死・自殺で処理されてしまう理不尽さを報告している。
労基署が調査に乗り出したケースでも、会社は証拠集めを妨害し、事実を歪曲・捏造し、「高血圧」「残業代目当」など死因を本人に転嫁。労災認定に進んでも、会社にペナルティを課す効力はなく、遺族が改めて民事訴訟に動かない限り、謝罪や反省は引き出せない困難さを指摘する。そして訴訟に至ると「不倫の噂があった」「家庭の問題では」等、会社は責任転嫁の言動をためらわず、被害者の名誉が傷つけられるという意味で「二度殺す」という書名の真意が明かされる。
前半は生々しい法廷ドラマのような展開を再現。後半は賠償金を巡って「命」が値踏みされる経済原理を問題視していく。人事部・法務部の「闇」に踏み込んだ衝撃の問題作といっていいだろう。
(久島豊樹/HRM Magazine より)