Q 来年度の最低賃金の目安が固まったと聞きました。具体的には、どのような内容になるのでしょうか。
A 8月4日に第71回中央最低賃金審議会が開催され、令和7年度の地域別最低賃金額改定の目安について答申が取りまとめられ、引き上げ額の目安については、Aランク「63円」(現在、6都府県)、Bランク「63円」(28道府県)、Cランク「64円」(13県)とされました。ただ、この数字はあくまで国(中央)の審議会が示した目安であり、具体的には、この答申を受けて、各地方最低賃金審議会で調査審議の上で、答申が行われ、都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定することになります。目安どおりに引上げが行われた場合の全国加重平均は「1118円」となり、昭和53年度に制度が始まって以降、最高水準となります。
都道府県ごとの各地方最低賃金審議会における具体的な最低賃金の答申の状況については、適宜、各都道府県労働局のホームページなどで公開されています。現在公開されている内容によると、東京1226円(+63円)、神奈川1225円(+63円)、埼玉1141円(+63円)、兵庫1116円(+64円)などとなっており、引き上げ額については、鳥取が「+73円」の1030円で最高額となっています。また、多くの地域で発効月日が10月初旬とされている中、奈良が「11月16日」、三重が「11月21日」とされているのが目を引きます。
最低賃金の引き上げにあたっては、すべての従業員の給与額をチェックする必要があります。パートやアルバイトも含めて、時給当たりの単価が最低賃金を下回らないようにしなければなりませんが、この算定にあたっては、基本給だけでなく、毎月定額で支給される手当や、定額残業代なども含まれる点に注意しましょう。最低賃金の引き上げは、法令の遵守という側面にとどまらず、広く従業員のモチベーションアップにもつながることになります。従業員への適切な説明や評価制度の運用、コミュニケーションの促進などを通じて、組織全体の生産性向上や競争力の向上にも資することを期待したいものです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)