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2025年9月 4日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」292・令和7年の社労士試験にみる派遣法

Q 今年の社会保険労務士試験にも、派遣法に関する出題があったと聞きました。具体的にはどのような内容ですか。

koiwa24.png 8月24日、第57回(令和7年度)社会保険労務士試験が実施されました。当コラムでも何度か触れてきましたが、社労士試験には毎回1~2問、派遣法もしくは派遣労働者に関する出題があります。今回の試験では、択一試験の問題として、労災保険法の問題の選択肢B、そして労務管理その他の労働保険及び社会保険に関する一般常識から一問の出題がありました。ここでは、後者についてみなさんと一緒に考えてみましょう。

労務管理その他の労働保険及び社会保険に関する一般常識
〔問3〕 労働者派遣に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。  
 なお、本問は、「令和4年度派遣労働者実態調査(事業所調査)(厚生労働省)」を参照しており、当該調査による用語及び統計等を利用している。
A 派遣労働者が就業している事業所について、全労働者数に対する派遣労働者の割合を産業別にみると、「宿泊業、飲食サービス業務」の割合が最も高くなっている。
B 派遣労働者が就業している事業所について、派遣労働者を就業させる理由(複数回答3つまで)をみると、「雇用管理の負担が軽減されるため」の割合が最も高く、次いで「一時的・季節的な業務量の変動に対処するため」、「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」の順となっている。
C 派遣労働者が就業している事業所について、全労働者に対する派遣労働者の割合を事業所規模別にみると、事業所規模が小さいほど高くなっている。
D 派遣労働者が就業している事業所について、過去1年間(令和3年10月1日から令和4年9月30日)における派遣労働者に対する教育訓練・能力開発の実施の有無をみると、「実施した」が約3割となっている。
E 派遣労働者が就業している事業所について、派遣労働者の不合理な待遇格差の解消に向けた派遣先労働者の待遇情報及び派遣労働者の派遣先における職務の評価情報の提供について、派遣元事業所から提供が求められ、実際に提供したことがある事業所を提供した情報の種類別にみると、「福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)」の割合が最も高く、次いで「派遣先が行った派遣労働者の職務の評価情報(働きぶりや勤務態度)」、「業務に必要な能力を付与するための教育訓練」の順になっている。


 派遣労働者実態調査は、労働者派遣の実態等について、事業所側と派遣労働者側の双方に対して実施されるものであり、派遣制度をとりまく諸問題の実態や改正法の実施状況などを把握することができるため、派遣元や派遣先の立場からも参考にされるケースが少なくないでしょう。本問は、直近の派遣労働者実態調査について、基本的な論点が問われた問題だといえます。

 Aの全労働者数に対する派遣労働者の割合については、産業別で最も高いのは「サービス業(他に分類されないもの)」(11.5%)であり、「宿泊業、飲食サービス業」(0.6%)は最も低くなっています。

 Bの派遣労働者を就業させる理由については、「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」(76.5%)が最も高く、次いで「一時的・季節的な業務量の変動に対処するため」(37.2%)、「軽作業、補助的業務等を行うため」(30.9%)となっています。

 Cの全労働者に対する派遣労働者の割合(事業所規模別)については、「1000人以上」(7.4%)が最も高く、「5~29人」(3.1%)が最も低くなっています。

 Dの過去1年間(令和3年10月1日から令和4年9月30日)における派遣労働者に対する教育訓練・能力開発の実施の有無については、「実施した」が69.7%となっています。

 Eの派遣労働者の不合理な待遇格差の解消に必要な情報の提供については、「福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)」(46.1%)が最も高く、次いで「派遣先が行った派遣労働者の職務の評価情報(働きぶりや勤務態度)」(32.2%)、「業務に必要な能力を付与するための教育訓練」(27.6%)となっており、本枝が正答となっています。

 いずれの選択肢も現場感覚からの常識で考えて正答できる内容だと思いますが、試験問題の出題という視点を通じて、派遣労働者実態調査の内容に触れる機会にしたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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