Q 外国人労働者を採用した場合、雇用保険の手続きはどのような点に留意すべきでしょうか。
A 厚生労働者の外国人雇用状況(令和6年10月現在)によると、外国人労働者数は約230万人で過去最多を更新しており、ますます増加する傾向にあります。構造的・慢性的な人手不足と外国人就労へのニーズの拡大などが相まって、今後もこの傾向は続いていくと思われるでしょう。前提として、国籍を問わず外国人にも、労働関係法令および社会保険関係法は日本人と等しく適用されるため、以下の要件に該当する労働者については、雇用保険の被保険者となります。
①1週間の所定労働時間が20時間以上であること
②31日以上の雇用見込みがあること(31日以上雇用が継続しないことが明確である場合を除く)
②の要件については、雇用契約期間が31日未満であっても、原則として31日以上の雇用が見込まれるものとされますが、雇用契約に更新する場合がある旨の規定があり31日未満での雇い止めの明示がない場合や、雇用契約に更新規定はないものの同様の雇用契約で雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合には、適用除外とされます。また、出向などで日本に駐在している外国人であって、母国の失業補償制度に加入している場合には、雇用保険の加入対象とはなりません。
外国人雇用については、雇い入れ時と離職時に、氏名・在留資格などをハローワークに届け出ることが義務付けられています(在留資格「外交」「公用」および特別永住者を除く、労働施策総合推進法第28条)。この届出は、通常は雇用保険の加入手続きと同時に行うことになり、「雇用保険被保険者資格取得届」の記載欄に、在留カードに記載されている氏名、在留カード番号、在留期間、資格外活動の許可の有無、在留資格などを記載します。具体的には、以下の通りです。
届出期限は、資格取得届や資格喪失届の提出期限と同様で、雇い入れの場合は翌月10日まで、離職の場合は翌日から起算して10日以内であり、独立行政法人、国立大学法人、公社等についても、届出が必要となります。届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、ハローワークからの指導、勧告の対象になるとともに、30万円以下の罰金の対象となります。なお、労働者は、事業主が加入手続きをしていないと思われる場合には、ハローワークに対して雇用保険の加入が必要であるか否かの確認を請求することができます。
就労が許可されていない在留資格の外国人を雇用したり、許可された活動範囲を超えて業務をさせ、不法就労助長罪(入管法第73条の2)に問われる悪質、違法なケースもみられ、しばしばニュースとして報道されることがあります。雇用者としてあまりにも当然の義務ではありますが、あらためて雇用保険の基本的な手続きを通じて、就労制限の有無や資格外活動許可の確認などのフローを振り返っておきたいところです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)