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2025年10月21日

【ブック&コラム】『高学歴発達障害』

専門医が解き明かすADHD・ASDの就労課題

c2510_1.jpg著者・岩波 明
文藝春秋、定価990円 (税込)


 忘れ物やケアレスミスが多く、指示が頭に入らない、相手の発言にかぶせて衝動的に話すといった行動には、ADHD(注意欠陥多動性障害)・ASD(自閉症スペクトラム障害)が疑われると、ADHD専門外来の医師である著者は語る。

 本書では、まずADHDとASDの基礎知識を解説。続けて、学生・社会人・フリーランスに分類し、計36の症例を物語風にトレースしていく。座学の成績は優秀なのに、ルールの順守や協調行動、場の空気を察した柔軟な対応などが苦手で、一度は社会生活に挫折。その後、投薬や環境を変えるといった処方により改善する経過をたどっている。一定の配慮(具体的な指示、頻繁な内容確認、指示をメモに取る時間の確保)、ルーチンワーク、自由度と専門性の高いリモートワークへの職種転換などで問題なく就労できるようになった再生事例は労使双方にとって示唆に富む。

 また、機械的記憶、計算能力が突出していたり、発想が突飛な方向に脱線したりする場合は発明家や起業家として成功する例もあると著名人の名を挙げて分析を加えている。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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