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2025年12月25日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」308・2026年の労基法改正は?

Q 来年の労働基準法改正について、さまざまな情報が飛び交っていますが。実際にはどうなるのでしょうか。

koiwa24.png 2026年の労基法改正に向けた議論が本格化し、1987年以来40年ぶりの大改正と話題になり、労働時間や休日をめぐる制度のみならず、「労働者性」「事業概念」「労使コミュニケーション」のあり方といった総論的な論点も含めた、企業の実務に直結する法適用のあり方の抜本的な見直しの流れが打ち出されています。2024年1月~12月に16回に渡って開催された厚生労働省の労働基準関係法制研究会における「労働基準関係法制研究会報告書」では、以下のような改正の方向性が示されています。

・連続勤務の上限規制(14日以上の連続勤務禁止)
・法定休日の明確な特定義務
・勤務間インターバル制度の義務化
・有給休暇の賃金算定における通常賃金方式の原則化
・「つながらない権利」に関するガイドラインの策定
・副業・兼業者の割増賃金算定における労働時間通算ルールの見直し
・法定労働時間週44時間の特例措置の廃止


労働基準関係法制研究会報告書(令和7年1月08日)

 法改正に向けては、2025年1月21日(第193回)から累次に渡って労働政策審議会・労働条件分科会での審議が続いており、直近は12月24日(第206回)が開催されましたが、具体的な改正案要綱が諮問・答申される段階にはいたっていません。12月23日には、厚生労働省は、労基法改正案の来年の通常国会への提出を見送る方針を固め、来年政府がとりまとめる成長戦略や、骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)などの内容を踏まえた上で、法案の提出時期が検討されると報道されています。来年の通常国会での改正案の提出は見送られるため、早期の法改正は遠のいたとみるべきであり、当初見込まれていたような施行時期についても、不透明な状況だといえます。

 2026年の労基法改正については、さまざまなオンライン上やSNSなどにおいて、すでに改正の内容と時期が確定しているかのような発信が散見され、一部のコンサルタントなどによる改正内容を煽るかのような例もみられたため、行政関係者や士業団体などは懸念を示す動きもありました。実際に筆者のもとにも、改正が確定していることを前提とする質問や問い合わせなどがあり、対応に苦慮したこともあります。

 報告書に示された改正の方向性自体は変わりませんが、実際の改正は少し先となる見込みであり、内容についても今後の議論によって詰められることになりますので、まずは落ち着いてその推移を見守りたいものです。大きな改正に向けて実務対応に備えたい思いはそれとして、安易にオンライン上の情報などに惑わされることなく、顧問社労士、弁護士などに相談したり、行政が公表する情報と向き合いたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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