コラム記事一覧へ

2026年2月19日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」315・都道府県別ジェンダーギャップ

Q 都道府県別のジェンダーギャップ指数の現状について教えてください。

koiwa24.png 「女性活躍推進」という言葉が社会に定着して久しく、国や地方自治体、多くの企業がさまざまな取り組みを加速させてきましたが、2026年2月に共同通信が公表した分析では、男性の賃金を100とした場合の女性の賃金指数は「75.8」であり、5年前と比較した格差の縮小幅は、わずか1.5ポイントにとどまることが分かりました。同データによると、1999年から2014年頃までは、5年ごとに2.4~3.0ポイント程度の改善が見られましたが、ここ10年ほどはその改善スピードが目に見えて鈍化しています。

 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を基にした2024年のフルタイム労働者のデータでは、男性の月額賃金平均が36万3100円であるのに対して、女性は27万5300円であり、その差は約9万円です。1986年の男女雇用機会均等法施行から40年が経過しようとしている現在、このような格差が解消されていない事実は重く受け止める必要があるでしょう。

 この最大の要因として指摘されているのが、「女性管理職比率の伸び悩み」です。内閣府の調査(2024年)によれば、全国の女性管理職比率は、課長級が15.9%、部長級が9.8%であり、部長級にいたっては1割にも満たないのが現状です。同志社大学の川口章教授も、女性管理職の登用に停滞感があることが賃金格差の改善を遅らせていると指摘していますが、このままのペースでは欧州並みの平等な社会が実現するのは数十年先になるという厳しい予測もあります。

 さらに注目すべきなのは、都道府県別の格差です。指数が小さい(=格差が大きい)地域には、明確な産業構造の特徴が見て取れます。筆者が拠点を置き、活動している三重県は、指数「70.5」で47都道府県中ワースト1位という結果になりましたが、続いて、茨城、愛知、栃木、静岡といった「製造業が盛んな地域」がワースト上位に並んでいます。これらの地域に共通するのは、①大手製造業が多いことから、全体の賃金水準は高い傾向にある、②現場重視の体制や男性中心の組織文化が根強く残っており、女性の管理職登用が極端に低い、という点です。

 一方で、格差が最小だったのは沖縄(78.4)であり、高知、鳥取、島根、徳島が続きます。これらの地域は比較的所得水準が低いため、男女ともに低位で平準化しているという側面もありますが、奈良や京都のように、産業が集積し所得も高い一方で、女性管理職の登用が進んでいるために格差が小さいという地域も見られます。

 男女の賃金格差は、単なる経済的な問題にとどまらず、根強い「性別役割分業意識(男性は仕事、女性は家庭)」を嫌い、意欲ある女性が地方から大都市圏へと流出する要因にもなっています。中長期的にみれば、「地域の貴重な労働力の損失」といえ、地方の企業が「女性は補助的業務」という旧態依然とした考え方を捨てきれない限り、地域の活性化も、人手不足の解消も成し遂げることはできないでしょう。

 このような「ジェンダーギャップ」の現実への対応策としては、製造業の現場であっても、自動化やDXの進展により、性別を問わず活躍できる職種が劇的に増えている実態に照らして、従来の「女性向け職種」の枠を超えたキャリアパスを提案することが考えられます。人手不足が加速する中で、「社内に候補がいない」と嘆く企業に対して、管理職経験を持つ女性の紹介や、専門職としての登用などの積極的な提案などを通じて、ロールモデルが一人誕生することで、組織全体の意識が変わる可能性があります。

 さらには、女性が管理職を躊躇する最大の理由である「長時間労働」や「責任の重さ」に対する不安を払拭するための対応や変革も重要です。短時間正社員制度や、テレワークなどを組み合わせた柔軟な管理職のあり方について、人材活用や労務管理全体の観点から全社的な取り組みを加速していくことが求められるでしょう。ジェンダーギャップの解消は国が進める政策や社会貢献という枠組みを超えて、多様な視点が組織にコミットして適切に評価されることを通じて、企業の生産性と創造性を高めるための「経営戦略」そのものだといえます。

 蛇足ですが、三重県がワーストという結果を受けて、筆者も日常的な業務を含めた問題意識を新たにしています。ただ、ジェンダーギャップの構造は、裏を返せば「改善の余地が最も大きい」という状況の表われでもあるともいえ、とりわけ労働市場のゲートキーパーでもある人材サービスがクライアント企業の意識変革を促すことの積み重ねによって、改善の方向性を力強く導く原動力にもなると思います。今日の第一歩を大切に、一つでも具体的な行動に移していきたいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

PAGETOP