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2026年7月30日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」337・地震発生時における労災の考え方について

Q 地震発生時の労災をめぐる業務上災害、通勤災害などの考え方について教えてください。

koiwa24.png 7月28日に発生した令和8年熊本地震の深刻な被害が懸念されています。被害に遭われたみなさまに心からお見舞いを申し上げます。地震の被害にともなう労災保険給付をめぐる相談や請求なども予想されますが、地震発生時における業務上災害、通勤災害などの考え方については、平成7年の兵庫県南部地震の際に発出された「兵庫県南部地震における業務上外等の考え方について」(平成7年1月30日、事務連絡第4号)で基本的な考え方や留意点などが示されています。

 天災地変による災害に係る業務上外の考え方については、「被災労働者が、作業方法、作業環境、事業場施設の状況等からみて危険環境下にあることにより被災したものと認められる場合には、業務上の災害として取り扱っている」とされ、「伊豆半島沖地震に際して発生した災害の業務上外について」(昭和49年10月25日、基収第2050号)の内容があらためて確認されています。

 業務災害については、「地震により、業務遂行中に建物の倒壊等により被災した場合にあっては、作業方法や作業環境、事業場施設の状況などの危険環境下の業務に伴う危険が現実化したものと認められれば、業務災害となる」、通勤災害については、「業務災害と同様、通勤に通常伴う危険が現実化したものと認められれば、通勤災害となる」とされ、「従来の考え方に基づくものであり、変更したものではない」点が強調されています。

 都道府県労働基準局労災主務課長に宛てて、「個々の事案の業務上外等の判断については、請求書が提出された後に行うものであることを併せて説明すること」、「労災保険給付に係る相談に対しては、親切、丁寧な対応を心掛けるとともに、請求書の提出があった場合には、迅速・適正な処理を行うこと」と言及されている点も、参考になる視点だといえます。

 事務連絡の後半では、業務災害、通勤災害をあわせて8例の「地震による災害事例」が掲載されていますが、とても具体的で分かりやすい内容ですので、この機会に見ておきたいものです。

1業務災害

事例1 作業現場でブロック塀が倒れたための災害
 ブロック塀に補強のための鉄筋が入っておらず、構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。
事例2 作業場が倒壊したための災害
 作業場において、建物が倒壊したことにより被災した場合は、当該建物の構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。
事例3 事務所が土砂崩壊により埋没したための災害
 事務所に隣接する山は、急傾斜の山でその表土は風化によってもろくなっていた等不安定な状況にあり、常に崩壊の危険を有していたことから、このような状況下にあった事務所には土砂崩壊による埋没という危険性が認められたので、業務災害と認められる。
事例4 バス運転手の落石による災害
 崖下を通過する交通機関は、常に落石等による災害を被る危険を有していることから、業務災害と認められる。
事例5 工場又は倉庫から屋外へ避難する際の災害や避難の途中車庫内のバイクに衝突した災害
 業務中に事業場施設に危険な事態が生じたため避難したものであり、当該避難行為は業務に付随する行為として、業務災害と認められる。
事例6 トラック運転手が走行中、高速道路の崩壊により被災した災害
 高速道路の構造上の脆弱性が現実化したものと認められ、危険環境下において被災したものとして、業務災害と認められる。

2通勤災害

事例1 通勤途上において列車利用中、列車が脱線したことによる災害
 通勤途上において、利用中の列車が脱線したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであることから、通勤災害と認められる。
事例2 通勤途上、歩道橋を渡っている際に足をとられて転倒したことによる災害
 通勤途上において、歩道橋を渡っている際に転倒したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであることから、通勤災害と認められる。


「兵庫県南部地震における業務上外等の考え方について」(平成7年1月30日、事務連絡第4号)


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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