スペシャルコンテンツ記事一覧へ

2014年2月13日

派遣法改正で安西弁護士に聞く(下)

安定雇用を阻む「常用代替」防止の壁

―― 今回の改正(注)では、派遣を「臨時的・一時的」と規定しておきながら、「雇用の安定」も要求しています。これは矛盾しているのではないでしょうか。

安西 そう思います。今回の改正では体力のない派遣元は撤退せざるを得ないでしょうね。現在のビジネスモデルで対応できないとなると、派遣の最も重要な役割である「労働力の需給調整機能」が弱まってしまう可能性さえあると思います。

―― 派遣先の正社員を保護する「常用代替」の防止を徹底したことも一因ですね。

is140213.JPG安西 「常用代替」の防止がある限り、派遣労働者の雇用の安定は図れないと思います。現在の多くの企業にとって、正社員の人件費を抱えるリスクは相当なもので、景気回復でこれだけ人手不足になっても、事務系を中心に正社員の求人は伸びていません。

 しかも、正社員の解雇要件は非常に厳しいですから、派遣先も派遣労働者の正社員化には慎重にならざるを得ません。仮に直接雇用されても、有期雇用の契約社員といった形態であれば雇用の安定にはなりませんよね。また、ここでも5年超の労契法の無期転換制の壁があります。

 そう見て来ると、派遣制度だけ幾ら改正しても、常用代替の防止を緩和する、正社員の解雇要件を緩和するといった「正社員改革」も同時に行わないと、派遣労働者の雇用安定効果は極めて限定されます。

 これは派遣にだけ掛かる問題ではなく、パート社員や契約社員など有期契約労働者に共通の問題であり、常用代替の防止という正社員中心主義の日本的発想からそろそろ転換すべき時期に来ているのではないでしょうか。 (おわり)

 

(注)労政審が建議した主要改正点
①派遣期間に制限のない専門的な「政令26業務」と、3年の期間制限のある一般(自由化)業務の区別を撤廃し、すべての派遣労働者の派遣期間を上限3年とする。ただし、無期雇用の派遣労働者、60歳以上の高齢者などは除外。
②派遣先企業の1人の派遣労働者の受け入れ期間を上限3年とする。ただし、労働組合などの意見を聞いたうえで、後任の派遣労働者を3年上限で受け入れ可能。
③3年経った派遣労働者に対して、派遣元は派遣先に直接雇用を要請、別の派遣先を紹介、自社の無期雇用社員にする、その他の雇用安定措置を講じる。
④特定派遣事業所を現行の届け出制から、一般派遣と同じ許可制に変え、派遣労働者のキャリアアップ支援などを許可要件に加える。
⑤派遣先は自社社員と同種の業務を行う派遣労働者について、賃金などの処遇を近づけるよう「均衡待遇の推進」に努める。

PAGETOP