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2014年7月28日

2014年、上半期の労働・雇用関連の動き

加速する制度改革、政治主導で推進

is140728.JPG 労働・雇用の変革に向けた動きが、メディアの注目を集めている2014年。日本の雇用慣行を含む現行の労働法制はどこへ向かうのか。政府・与党は議論のテーブルである労働政策審議会(厚労相の諮問機関)について、労使の各団体が占めている“指定席の配分”のあり方に切り込む構えも見せている。ドラスティックな展開が予想される今年後半を予想するうえで、重要な布石となった今年前半の労働法制に関する主な動きを時系列で整理した。(報道局)

【2014年1月】

15日=厚労省が調査した「裁量労働時間等に関するアンケート調査」で、裁量労働制の適用を受けている専門・企画業務型の労働者の7割が「満足」していることが分かった。同日、裁量制の拡大の可否について審議している労政審の労働条件分科会で公表された。

16日=労政審が、キャリアアップのために資格取得などを目指す人を対象に支給する教育訓練給付などを拡充した厚労省案を「妥当」と答申。これを受けて、雇用保険法改正案の第186回通常国会への政府提出が決まる。

17日=労政審の労働力需給制度部会(以下、需給制度部会)が「労働者派遣法改正案」の建議の取りまとめに向けて12回目の会合。初会合は前年の8月30日で、厚労省は年内建議を念頭に置いていたが、労働者側の強い反発などで“越年審議”となっていた。

23日=連合が非正規組合員の声を直接聞く「対話集会」に乗り出すことを定例会見で発表。均衡・均等待遇の実現を掲げる「2014春闘」の一環で、連合として初の試み。同25日の千葉を皮切りにスタート。

23日=労政審の雇用均等分科会は、パートタイム労働法の一部改正を「妥当」と答申。12年6月に同分科会が出した建議に基づくもので、その中心は同法8条で規定している「差別的取扱いの禁止」の範囲拡大。

24日=第186回通常国会召集、会期は6月22日までの150日間。厚労省関係の改正を含む新規法案は11本で、うち労働法制は4本。

29日=需給制度部会が13回目の会合を開き、建議。翌30日に上部組織の職業安定分科会で了承され、時間的にぎりぎりのタイミングで国会提出にめどがつく。

【2月】

5日=2014春闘が労使代表会談で本格スタート。今年は、各社の業績に応じた「賃上げ」を検討する経営側と、「ベースアップ」の実現に踏み込む労働側の攻防へ。連合は翌6日に春闘中央総決起集会を開催。

14日=労政審は「有期労働契約の無期転換ルールの特例等」について建議。特例とする有期労働者は、(1)一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門知識、技術または経験を有する人(上限10年)、(2)定年後の同一の事業主、この事業主に引き続いて雇用される労働者――に限定。

21日=需給制度部会は、建議を受けて厚労省が作成した労働者派遣法の改正案要綱を審議。建議と要綱の「整合性」について労働者側委員の指摘があり、答申は次回に持ち越し。

25日=労働条件分科会が「有期労働契約の無期転換ルールの特例等」について答申。

27日=需給制度部会が派遣法案の要綱を「概ね妥当」と答申。労使のさらなる指摘や注文は「なお書き」に盛られた。翌28日に職業安定分科会で正式に厚労相に答申された。

【3月】

7日=政府の規制改革会議・雇用ワーキンググループが第21回会合を開き、職業紹介事業の法規制のあり方などについてヒアリングを交えて協議。

11日=派遣法改正案を閣議決定し、即日、国会に提出。

12日=春闘第1陣として自動車、電機、鉄鋼などの主要メーカーが一斉回答。6年ぶりに、労組側が要求していたベアや年間一時金(ボーナス)は満額かそれに近い回答を出す企業が相次ぐ。安倍首相が経済団体に働きかけた“官製春闘”との指摘もある中で、4月の消費税率アップを前に景気回復を印象付けた格好。

13日=労働条件分科会は昨年秋の臨時国会で成立した国会戦略特別区域法(特区法)の規定に基づき、厚労省が提示した「雇用指針」案を了承。特区内に設ける「雇用労働相談センター」が進出企業の相談に乗る。

14日=連合が春闘の第1回集計結果をまとめた。「前倒しの回答を引き出せており、内容もこれまでの流れと一線を画している。現時点で評価できる」(神津里季生事務局長)との見解を示した。

17日=規制改革会議・雇用ワーキンググループが前回に続いて個別労働紛争処理について有識者のヒアリングを実施。

24日=厚労省が「ハローワーク求人ホットライン」を開設。ハローワークで公開している求人票の記載内容と、実際の労働条件が異なる場合の対策強化に踏み出す。

28日=育児休業の家庭に対する「育児休業給付」の引き上げなどを柱とする雇用保険法改正案が成立。4月1日施行。

【4月】

1日=厚労省が職業安定局派遣・有期労働対策部に「民間人材サービス推進室」を新設。良質な民間事業者の育成支援、活用などが目的。

1日=厚労省は、労政審が了承した「雇用指針」を正式発表。「内部労働市場型」と「外部労働市場型」の人事管理の違い、解雇規制などの判例を中心にまとめている。

11日=規制改革会議の雇用ワーキンググループが第22回会合を開き、6月の答申に向けて有料職業紹介事業と解雇規制のそれぞれの見直しについて検討を再開。

22日=政府の経済財政諮問会議と産業競争力会議が合同会合を開き、戦略的課題の「労働力と働き方」について提言。競争力会議の雇用・人材分科会の民間議員から提案があった内容で、注目は「成果ベース」の労働時間制度。

24日=規制改革会議・雇用ワーキンググループの第24回会合で、再就職支援と職業能力開発、雇用仲介事業の改革などについて議論を展開。

25日=規制改革会議・雇用ワーキンググループは第25回会合を開き、産業競争力会議が提唱した「成果型賃金制度」について、「オプションのひとつ」と同グループのこれまでの議論の積み上げを基に考えを示す。

25日=閣議決定を経た派遣法改正案の条文の一部に誤記があったことをアドバンスニュースと放送1社が報じる。

26日=連合主催のメーデーが東京・代々木公園などで開かれ、自民党の首相として13年ぶりに安倍首相が来賓として出席。連合は「労働法制の改悪阻止」を掲げ、特別決議した。

【5月】

14日=ハローワークの求職者情報の民間人材サービスへの提供に関し、来年度の運用に向けた「ルール作り」が始まる。新設サイトの開設が柱。

【6月】

13日=規制改革会議が、約235項目に及ぶ改革案を盛り込んだ答申を安倍首相に渡した。昨年の答申に比べ、医療、雇用など5分野における「岩盤規制」と呼ばれる強固な規制を打破する内容が目立つ。雇用分野においては、労働時間規制の見直しについて、「新しい労働時間制度」、「労働時間の量的上限規制」、「休日・休暇取得の強制的取組」の3つを同時に進める「三位一体改革」を提唱した。

16日=産業競争力会議は第17回会合で「日本再興戦略」改訂版の素案を決定、発表した。昨年策定した「再興戦略」に新たな項目を加えた改訂版で、企業の「稼ぐ力(収益力)」、「女性の活躍促進と働き方改革」、「新成長エンジン」、「地域活性化」の4つについて雇用、農業、医療、税制など、既得権の強い「岩盤規制」に切り込んだのが大きな特徴。

19日=労働安全衛生法改正案が成立。化学物質による健康被害が問題となった胆管がんなど、最近の労災状況を踏まえ、労災を未然防止するための仕組みを充実させる。参院先議で進められた唯一の法案。6項目の対応策が盛り込まれているが、精神障害の労災認定件数の増加に伴う「メンタルヘルス対策の充実・強化」が主要項目の一つ。

20日=派遣法改正案の取り扱いについて、衆院議院運営委員会は「審議未了のまま処理」という「廃案」の措置を取ることを決めた。ただ、政府・与党の対応は、法案自体を完全に引っ込める一般的な「廃案」とは異なり、問題となった条文の誤記部分を修正し、秋の臨時国会に「新たな法案」として提出する構え。

20日=参院厚生労働委員会は、有期で通算5年超の労働者が無期転換できる労働契約法の例外を盛り込んだ「有期雇用の特別措置法案」について、継続審議とした。実質的に政府主導で起案されたものだったが、今国会では衆院通過にとどまった。

22日=第186回通常国会が会期延長をせずに閉会。

24日=政府は経済財政運営の指針となる「骨太方針」、新たな成長戦略となる「日本再興戦略の改訂版」、「規制改革実施計画」の3本を閣議決定した。アベノミクスをさらに強化して、デフレ脱却と経済再生のスピードを上げる方針。安倍首相は会見で「安倍内閣の成長戦略にタブーも聖域もない。日本経済が持つあらゆる可能性を開花させるため、いかなる壁も打ち破る」と強調。

【7月】

7日=労働条件分科会が開かれ、「日本再興戦略の改訂版」や「多様な正社員」などについて、厚労省の説明があった。労使の見解は平行線。

11日=厚労省の「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会」は第14回会合を開き、昨年9月以来議論した内容を報告書にまとめて散会した。「多様な正社員」は政府の新成長戦略に盛り込まれるなど、企業の「稼ぐ力」を回復させる有力な就労形態として注目されている。
 「多様な正社員」は、「正社員」と「非正規社員」の二極化の弊害を緩和し、労働者のワーク・ライフ・バランスと企業にとっての優秀な人材確保の両方を実現するため、両者の中間的な就労形態として企業における導入が広がっている。
 

※賛否両論、活発に展開されてきた国会と省庁を中心にした労働法制に関する見直しの動きや議論はいったん休息。今後の動きは、8月のお盆休みと9月初旬の第3次安倍内閣の組閣後に再び活発化すると見られる。

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