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2019年6月17日

就職氷河期世代、正規へ30万人増

政府が「骨太の方針」に盛り込みへ

 政府は、6月下旬に打ち出す経済財政運営の基本方針(骨太の方針)で、「就職氷河期世代」の支援を打ち出す。この世代はバブル崩壊による長期不況が続いた時代の高校・大学卒業生らで、このうち今も不本意ながら不安定な仕事に就いている人に対して、今後3年間で30万人程度を正社員にする計画だ。しかし、肝心な企業側の方針などは決まっておらず、実効性は未知数だ。(報道局)

 就職氷河期世代は現在、33~48歳が中心の約1700万人で、上の年代は1970年前半に生まれた「団塊ジュニア」と重なる。総務省の労働力調査によると、18年時点で全年代の正規雇用者3485万人に対して非正規雇用者は2120万人で、非正規率は37.8%とここ数年は横ばいで推移している。

sc190617.png この非正規を10歳単位の年代別にみると、最も多いのは55~64歳の429万人。次いで45~54歳の425万人、35~44歳の371万人の順。ただ、14年以降の特徴は、25~34歳と35~44歳が毎年10万人前後減り続けているのに対して、45~54歳が10万人以上増え続けていること。非正規が非正規のまま“高齢化”している結果とみられ、非正規に占める比率も20%程度で推移している=グラフ

 ただ、どの年代も女性の非正規が男性の5~6倍の規模で圧倒的に多く、女性の増減が主要因となっている。男性の場合、35~44歳は65万人、45~54歳も60万人程度で、前者が13年当時から6万人減ったのに対して、後者は5万人増えていて高齢化を裏付けている。氷河期対策の主要対象は、こうした35~44歳と45~54歳の男性非正規になるとみられることから、「30万人増」の数値目標は容易でない。

 問題は、正社員希望者側と企業側のマッチングだ。30代後半~40代ぐらいになると、企業側も通常は即戦力を期待し、社内研修などでじっくり育成する余裕はない。しかし、厚労省の職業別有効求人倍率(4月時点)をみると、建築・土木・測量技術者(5.91倍)や建設・掘削業全般(5.21倍)などが高い半面、希望者の多い事務全般(0.44倍)は人手が余っている。非正規の中には制約の多い正社員を嫌う人も多く、人手の欲しい職種に中年非正規を“正規誘導”できるかどうかがカギとなる。

 政府は、ハローワークに専門窓口を設け、短期プログラムによる資格取得や雇用企業への助成増額などを検討している。しかし、この世代は非正規が長く、能力開発の機会が乏しかった層でもある。さらに、新卒と違って生活地域や家庭の事情も加わるため、給与水準の高い「無限定正社員」に加わる可能性は限られてくる。キャリア形成には一定の時間も必要なことから、多くの専門家が「取り組みが遅過ぎる」と批判的だ。

 しかし、まったく方策がないわけではない。ここで注目されるのが、勤務地や職種などの制限がある「限定正社員」。企業にとっては、転勤が不要な職種や、特定分野で能力を発揮できる社員なら…

 

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限定正社員の導入企業2割、人数は7%
普及は道半ば、JILPT調査(2018年9月11日)

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