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2020年10月 5日

もう尻すぼみ?テレワーク

「会社中心主義」の高い壁

 企業のテレワーク熱が冷えつつある。新型コロナウイルスの感染が急拡大して全国に外出自粛などの非常事態宣言が出された4月、緊急避難的にテレワークを導入した企業が多かった。このため、宣言が解除されてニューノーマル(新しい生活)が日常になると同時に、多くの企業が再び出勤型の勤務に戻しているためだ。このままテレワークが一時しのぎで終われば、働き方改革の一策が尻すぼみに終わる可能性もある。(報道局長・大野博司)

 テレワークに消極的な企業の姿勢は、統計調査にはっきり表れている。労働政策研究・研修機構(JILPT)がサラリーマンを対象に8月に実施した「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響調査」によると、感染拡大前にテレワークで働いていた人はわずか27%程度で、73%の圧倒的多数の人は通勤勤務だった。

sc201005.png しかし、感染が広がって緊急事態宣言が出た4月の第2週になるとテレワークで働く人が75%に急増し、5月第2週には94%まで拡大。しかし、宣言が解除された5月最終週には74%に戻り、7月最終週にテレワーク勤務は49%まで減少し、過半数の51%は従来勤務に戻っている=グラフ。調査時点から3カ月近く過ぎた現在は、さらに従来勤務の比率が高まっていると推測される。

 テレワーク勤務の比重にも特徴がみられる。テレワーク勤務が最も多かった5月第2週では「週5日以上」が35%に次いで、「週1~2日」が33%。これが7月最終週には各14%と20%に減少しているが、「週5日以上」はコロナ前から12%あり、この層はコロナ禍とは無関係に従来からテレワークで仕事をしている人たちで、緊急避難的にテレワークで従事したのは「週1~2日」の層が中心と考えられる。今後、この層の人たちを増やしていくことがテレワークの定着につながりそうだ。

 すでにテレワーク経験者に対するさまざまな調査が公表されているが、メリットとしては「通勤時間やコストが削減できた」「家事などに充てる時間が増えた」が多く、デメリットとしては「仕事と仕事以外のメリハリをつけにくい」「職場の上司・同僚らとのコミュニケーションが不足」などが多い。

 そして、最も肝心な仕事の効率については、意見が分かれる。パーソルプロセス&テクノロジーが9月に実施した調査では、テレワークと出勤の生産性比較を経験者に聞いたところ、58%の社員が「上がった」、42%が「下がった」と答えた。実態はほぼ半数ずつといったところであろう。

 「上がった」理由としては「仕事に集中できた」「移動時間が減った」「自分の裁量で仕事を進められた」などを挙げる人が多く、「下がった」理由では「同僚、上司らとのコミュニケーション不足」「環境が整っていない」「非対面なので仕事の確認が難しい」などを挙げる人が多かった。テレワーク経験のなかった人ほど、今回のコロナ禍でロクな準備もないまま自宅で仕事をすることになったため、職場から切り離されて仕事をすることへの戸惑いが大きいようだ。

定着のカギは信頼関係と職務の明確化

 これらの体験から、テレワークをスムーズに進めるために必要な条件が浮かび上がってくる。一つは上司や同僚ら仕事仲間との日ごろのコミュニケーション、もう一つは職務内容の明確化だ。1カ所に集まって会議や打ち合わせを自由にできる職場に対して、テレワークは個々人が"孤立"して不安に陥りがちになる。また、日本の企業は「チームプレー」が多く、社員個人の職務内容が明確になっていないケースが多いため、「今日はこれだけやればいい」という線引きがむずかしくなる。

 今後は欧米で一般的になっている「ジョブ型」の職務分担が必要になりそうだが、これはコロナ対策と同時に長時間労働の是正の観点からも必須となっている。少なくとも、労働時間の長短を仕事の評価基準に据えるやり方は、生産性の向上にほとんど役に立たない時代になったことは明白だ。

 コロナ禍で注目されたテレワークだが、今冬はインフルエンザとの"ダブル感染"の懸念が強まっており、再びテレワークが必要になる可能性が高い。コロナ以外にも地震、台風などの災害、大規模停電などのアクシデントが発生して出社できない場合の有力な対策にもなる。

 また、育児・介護などでフルタイム就労が困難なサラリーマンにとって、テレワークには大きなメリットがあることも明らかになっている。従来から官民挙げて進めてきた「多様な就労形態の促進」を一層進めるためにも、今のうちにテレワークを定着させる環境整備を急ぐ必要がありそうだ。


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