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2021年11月10日

ランスタッド・ジャパンのポール・デュプイ会長兼CEOに聞く(下)

「褒める文化」をつくる、「リーダーシップは鍛えて備わる」

――ランスタッド・ジャパンのトップに立った。どのような変化を起こし、士気を高めていく考えか。

sc211110.jpgデュプイ 就任して4カ月。コロナも沈静化してきたので、私が日本で18年暮らした大阪を皮切りに、全国各地の拠点を回る「ロードショー」を展開しています。私の命題は、派遣以外の部門も伸ばして名実ともにトータルソリューションを実現することです。同時に、バリュー(価値、評価)が大切。事業領域を拡大させても、しっかりバリューを守ります。競争は厳しく、コンペチターは同じ市場で似たようなことを展開していますが、そうであるからこそ、サービスの仕方を磨き、クライアントに喜んでもらえる心が大切です。

 クライアントは、企業とランスタッドを介して働く人の両方ですが、もうひとつ、ランスタッド・ジャパンの社員が喜ぶ会社にしなければなりません。それには、社員がもっと輝き、より実力を発揮でき、誇りに思えるブランドに育てあげることが重要です。世界では「ランスタッド」は誰でも知っている総合人材サービスのブランドですが、日本ではもっと広げる余地があります。

――企業ブランドの向上には社員のスキルアップとチームを率いるリーダーが必要。上梓したデュプイCEOの「リーダーシップ論」を聞きたい。

デュプイ リーダーシップは、生まれつき備わっているものではありません。筋肉と一緒で、鍛える、考えることによって身に付く。リーダーシップにもいろいろな力量が必要で、スポーツ選手に例えると腕や腰、足など筋肉のバランスが大事です。自らを鍛えなければ、リーダーにはなれません。

 マネジャーとリーダーの違いを正しく理解することも重要です。マネジャーはプロセスを守って人や予算などを管理する。リーダーは自分の周りの人を成長させる、という役割です。押したり引っ張ったり、支えたり。私は、幹部ポストの面接の際に「自分の周りがどう成長したか教えてほしい」と尋ねます。優秀なリーダーは次々と名前が挙がります。言えない人はリーダーの資格が足りない。リーダーシップ論と私の経験は、社内や業界内だけでなく、広く一般企業にも参考になると思います。来年には書籍の日本語版が完成します。

PAを重要視、「human forward.」につながる

――ランスタッド本社は世界の総合人材サービスの業界団体でリーダーの役割を果たし、公的機関と政策を含む連携を深めてきた。日本でも業界団体で要職を担っているが、今後のポジションをどう描いているか。

デュプイ ランスタッドはパブリック・アフェアーズ(PA)という部署を置いています。企業や組織が自社のビジネス環境を把握し、より良い環境を構築するために各方面のステークホルダーと対話をしていく活動で、そのひとつが業界団体活動を積極的に応援して牽引することです。オランダ本社と同じく、私もこの理念に共感し、重要視しています。

 前任のインドでもランスタッドのアンネマリー・ムンツが業界団体を立ち上げ、現地の人材会社が会員となりました。外資系はランスタッドだけで、私も理事を務め、メディアに出演したり、現地の労働局や法務局などと意見交換を重ねてきました。PAの意味は企業によって違いがあるかもしれませんが、「human forward.」というランスタッドの基本姿勢につながっています。働く人の潜在能力を引き出し、その可能性をキャリアと成長につなげていく。働く一人ひとりを大切に、安全な場所で働き、給料をきちんともらうという権利を守っていきます。インドの経験も踏まえ、日本でもPAの活躍を後押ししてプレゼンスを高めたいと思います。

――ランスタッド・ジャパンの事業拡大に向けた方策や手法を聞きたい。

デュプイ ビジネスだけ考えると成長は大事です。ランスタッドは61年、成長の道を歩んできました。ただ、基本にあるのは人を成長させること。会社の成功は利益、売上、社員数などが示しますが、その前提として私は、優秀な人材が集まり、ビジョンを明確に伝え、そこからカルチャーにしていくことを重視したい。自分で考えて挑戦する「やってみよう精神」です。

 日本人は謙虚ですが、何かをチームで達成したら、大いに褒めて賞を与え、ワイワイ楽しむ環境をつくります。インドでも積極的に展開した「褒める文化」をジャパンにも取り入れます。小さなことでも達成したらワイワイ。その積み重ねの結果に数字や成長はついてくる。オフィスレイアウトの3大コンセプトに「セレブレーション(祝う)」を盛り込んだと話しましたが、この「褒める、祝う」を意識したものです。ランスタッド本社は今年、これからの投資国として世界の中でアメリカと日本の2国を選定しており、注目度の高い重要な国。これまでの私の経験と知見を活かし、発展・拡大モードに突き進みます。

(おわり)


Paul Dupuis(ポール・デュプイ)1968年、カナダ・オンタリオ州生まれ。日本、シンガポール、香港、韓国、インドを含むアジア地域で25年以上にわたり、ビジネスの成長と発展や戦略的プランニング、イノベーションなどの分野で指導的役割を果たす。2013年にランスタッド・ジャパンに入社し、プロフェッショナル事業部のマネージングディレクターを務め、14年に取締役に就任。17年にランスタッド・インドのCOOとして着任後、CEOに昇進。21年7月から現職。リーダーシップ論を説いた『THE E5 MOVEMENT』を出版した。


ランスタッド・エヌ・ヴィー 1960年設立、オランダに本社を置く総合人材サービス企業。欧州各国をはじめ、世界38の国と地域に拠点を持つ。従業員数3万4680人(2020年12月末)、資本金5927億円(同)、売上高2兆6300億円(2020年度実績)で世界1位。ランスタッド・ジャパンはグループ内で米国とともに投資対象に挙げられている重要拠点。

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