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2024年1月29日

「働き方の変化」に対応した労基法のあり方を本格検討

「労働時間制度」など焦点、有識者研究会「第2弾」

 「働き方の多様化で労働基準法が想定していなかったことへの対応」――。経済学者らによる「新しい時代の働き方に関する研究会」報告書(昨年10月)に盛り込まれた「方向性」を受けて、1月23日、法律学者らで構成する「労働基準関係法制研究会」がスタートした。有識者による研究会の「第2弾」は約1年にわたる多角度的な検討を重ねる予定で、厚生労働省は来年にも労働政策審議会のテーブルにのせたい考えだ。「働き方の変化」に伴う課題として「労働時間制度」などが焦点になると想定されるが、規制の「強化と緩和」といった従来の二元論に陥ることなく、「働きやすさ」に視点を置いた議論が期待される。労基法を巡る現状と課題、今後の展開を考える。 (報道局)

「守る」「支える」の視点、働く人の選択・希望が反映できる制度

 有識者による「第1弾」の研究会は、昨年3月に経済学者や企業人事の専門家らをメンバーとして発足。計15回の検討を経て、同10月に報告書を取りまとめた。報告書のポイントをまとめると、「企業を取り巻く環境」「労働市場」「働く人の意識」の変化を捉えたうえで、現行法は「鉱業法や工場法を前身としたもので、物理的な『事業場』が規制の単位となっている」と指摘。現在は「リモートワークや副業・兼業など働く時間や場所の多様化が拡大している」などとして、「守る」と「支える」の2つの視点が重要と整理した。

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「第2弾」の有識者研究会の設置を決めた2023年
11月の労政審労働条件分科会

 労働者の心身と健康を「守る」。自発的な能力開発とキャリア形成が実現できるよう「支える」。この2軸を基本線に、新しい時代に即した労基法の方向性として(1)変化する経済社会の下でも変わらない考え方を堅持(2)働く人の健康確保(3)働く人の選択・希望の判定が可能な制度(4)シンプルでわかりやすく実行的な制度(5)労働基準法制における基本的概念が実情に合っているかの確認(6)従来と同様の働き方をする人が不利にならないように検討(7)労働基準監督行政の充実強化――の7つの着眼点を示した。

 現状認識を率直かつ明瞭にまとめた報告書で、これから始まる「法制度に落とし込む検討」の土台として網羅的かつ偏りのない内容となっている。

副業・兼業の「労働時間通算」見直し、規制改革推進会議

 労基法の見直しに関する動きとしては、政府の規制改革推進会議も兼ねてからアクションを起こしている。昨年12月26日に、同会議と国家戦略特別区域諮問会議の合同会議が開かれ、同会議が「中間答申」を提出した。その中の「良質な雇用を実現する」という項目の中に「副業・兼業における割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理の在り方の検討」を盛り込んでいる。労基法全体のあり方ではなく、目下のテーマとして「労働時間の通算管理」に絞って言及している。

 考え方と改革の方向性はこうだ。「副業・兼業は、労働者にとって主体的なキャリア形成につながる意義があり、併せて、送り出し企業にとっては社内では得られないスキルの獲得、受け入れ企業にとっては人材確保の選択肢の拡大といったメリットがある」「社会全体においても、物流や交通、医療、介護といった多くの分野での人材不足問題への貢献や、高生産性産業への労働移動を通じた良質な雇用確保・生産性の向上が期待される」との見解に立つ。そのうえで、副業をしている労働者数が増えていない現状を踏まえて問題点と打開策を明記した。

 割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理については、「制度が複雑で企業側に重い負担となるため、雇用型の副業・兼業の認可や受け入れが難しいとの指摘がある。米国、フランス、ドイツ、イギリスでは割増賃金の支払いにおいて労働時間の通算管理を行っていない」として、「働き方改革関連法の施行5年の見直しの検討会に合わせ、割増賃金の支払いに係る労働時間の通算管理の在り方について、労働基準法などの関係法令における行政解釈の変更も含めて検討すること」と指示。厚労省に対し、本年度に検討開始、来年度に結論を得ることを要請した。

 一点突破のテーマとしてハレーションの小さくない要請・指示だが、「働き方の多様化」に照らした「守る」「支える」を前提としたものであるならば、見直しの検討に値する課題だ。

「労働基準関係法制研究会」の議論の行方

 こうした流れの中で本格始動する「労働基準関係法制研究会」。初会合では、労働時間に関する制度について委員から「とても複雑。説明も難しく、働く人が理解できる仕組みになっていない」などの提起も聞かれた。この検討会の...


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