厚生労働省が8日発表した毎月勤労統計調査の8月速報値(従業員5人以上)によると、労働者1人あたり現金給与総額は30万517円(前年同月比1.5%増)で44カ月連続のプラスとなった。物価上昇分を差し引いた実質賃金指数(20年=100、持ち家の帰属家賃を除く)は82.7(同1.4%減)となり、1月から8カ月連続のマイナスになった。
給与額のうち、基本給などの所定内給与は26万8202円(同2.1%増)だったが、夏ボーナスなどの特別給与が1万2639円(同10.5%減)と7月の同7.9%増から大きく減少し、実質賃金のプラス転換を阻んだ形だ。
雇用形態別の総額は、正社員が中心の一般労働者が38万5804円(同1.9%増)、パートタイム労働者も11万1635円(同1.6%増)といずれも伸びたものの、伸び率は低かった。
産業別で大きく伸びたのは、「生活関連サービス等」の24万2068円(同12.2%増)、「情報通信業」の44万3951円(同5.5%増)など。一方、「運輸、郵便業」は32万4693円(同3.2%減)、「卸・小売業」も26万5442円(同0.8%減)となり、16産業のうち2産業がマイナスだった。
月間総実労働時間は129.4時間(同2.1%減)。月末の常用労働者数は5176.9万人(同1.4%増)で、パートタイム比率は31.12%(同0.3%増)だった。
実質賃金の伸びは7月速報段階で同0.5%増と7カ月ぶりのプラスを記録したが、確報では一転して同0.2%減のマイナスに戻っていた。この間、政府・与党や野党は7月の参院選などを通じて、現金給付や消費減税などを公約に掲げ、野党も一致してガソリン減税法案を国会提出したものの、政治的駆け引きで見送られるなど、物価対策は事実上の「無策」状態となっている。