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2014年10月 4日

【この1冊】『ルポ高齢者ケア~都市の戦略、地方の再生』

「地域で支え合う」ためのヒントが満載

c141004.jpg著者・佐藤 幹夫
ちくま新書、定価800円+税

 

 孤独死、認知症、在宅医療、限界集落など、超高齢社会での高齢者ケアは正念場を迎えている。大都市では独居高齢者や生活困窮者、地方では過疎に伴う医療・介護体制の不備など、それぞれに抱える問題は深刻だ。

 そんな切迫した状況下で、利用者側の高齢者や家族にとっては、何が最良のケアなのか。この分野の専門家である筆者は、そんな疑問に答えようと、千葉県柏市、東京都新宿区、熊本県菊池市、長野県上野村など、高齢者ケアで先進的な取り組みを進めている自治体を訪ね、取材を重ねた。本書はその詳細なルポである。雑誌「健康保険」での長期連載を再編集したもので、高齢者ケアをテーマにした著作としては4冊目。

 高齢者を地域で支えると言っても、その地域自体が活力を失っている場合はどうすべきか。国が進める「地域包括支援システム」も机上の空論になりかねない。地域づくりは地域の再活性化であり、高齢者ケアの充実はそれと車の両輪で進めなければ実現は困難だという。

 また、各地域のリーダーたちの多くは楽天的でオープンマインド。人と人をつなぐ戦略性を持つタイプという共通点がある。詳しくは本書に収められている好事例に触れてもらうにしても、日本の大課題に多くのヒントを与えてくれる1冊。 (のり)

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