コラム記事一覧へ

2017年10月24日

【書評&時事コラム】『超高齢社会2.0 クラウド時代の働き方革命』

高齢者が若者を「支える」社会へ

c171024.jpg著者・檜山 敦
平凡社新書、定価780円+税

 

 世界最速で「超高齢社会」を突き進む日本。高齢者が多く、若年者の少ない逆ピラミッド型の人口構成を目にすると、経済活力は失われ、社会保障だけが膨らむ“老害国”にみえる。ところが、この人口ピラミッドを逆さまにすると、別な社会が見えて来る。それは若者を元気な高齢者が支える「豊かな長寿社会」であり、著者の研究もここから出発した。

 しかし、高齢者が若者を支えると言っても、どうすれば支えることができるのか。孫の世話をして、働き盛りの子供夫婦を支える。シルバー人材センターを通じて、現役世代のやらない軽作業で社会貢献する。普通にみられるこうした光景も、それなりに若者世代を支えているには違いないが、著者の提言する「高齢者クラウド」はもっと大規模で本格的な就労システムだ。

 具体的には、高齢者の人材プールと求人側の希望をビッグデータ化し、ICT(情報通信技術)を使ったマッチングでつなげようという考え。本書のタイトルは、インターネットの新しい利用が「ウェブ2.0」として流行したのにならっている。「第1章 シニア就労のススメ」から「第5章 未来へ向けて」まで、全5章に分けてその実現性を解説している。

 本書の特徴は、単なる机上の理論ではなく、東大とタイアップして千葉県柏市で実証実験を重ねるなど、すでに具体化に踏み出している点だ。残念なのは、ITがらみの内容とあってカタカナの不必要な使用が目立ち、高齢者には読みにくいこと。著者の言う「ICTバリア」の一つである「概念的バリア」に引っ掛かりかねない。 (俊)

PAGETOP