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2011年6月11日

【この一冊】『「オバサン」はなぜ嫌われるか』

「おばさん」は好かれるのに…

shohyou obasann.jpg『「オバサン」はなぜ嫌われるか』
著者・田中ひかる
集英社新書、定価700円+税

 

 タイトルを見た時、「そうかなあ」と首をひねってしまった。なぜなら、評者は「おばさん」が大好きだから。若い女のようにツンツンしていない。電車の中で化粧したり、オニギリに食いついたりしない。そして、くしゃみの出る香水の香りでなく、「母」のにおいがする。「おばさん」バンザイ! 

 というわけにはいかない理由が本書には書かれていて、「おばさん」にまつわる“女性哀史”は広くて深い。表紙の帯にあるように「無意識に発する言葉の裏に差別が隠れている」ことを明らかにするのが目的。話をわかりやすくするため、「おばさん」と「オバサン」を使い分けている。 

 「おばさん」は、女は若いのに限るという男性中心の歴史的偏見の犠牲者という位置づけだ。女性は歳を取るほど出産が困難になり、仕事もなぜかパートに甘んじなければならない。芸能界を中心に女性にとって年齢はタブー。男女平等、均等法の世界になっても、偏見は脈々と続いている。 

 これに対して「オバサン」は図々しいオバタリアンのこと。電車のわずかなすき間に割り込んで座る。観光地などが混雑すると男子用トイレを使うなど、枚挙にいとまがない。「女を降りた」年配女性の開き直り、といったところか。 

 「おばさん」でも「オバサン」でも、そこには差別を含んだニュアンスが込められており、呼ばれる方の女性は普通なら嫌がる。それは「おじさん」の呼称に比べると明らかだという。 

 著者は「中高年女性に対する適切な呼称がないのは不便」として、「おばさん」の復権を提唱。同時に「年をとることが憂鬱な社会は、幸せな社会とは言えない」と述べ、高齢社会の「姥(うば)捨て山」化に警鐘を鳴らす。  (のり)

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