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2012年2月18日

【この1冊】『日本人はどのように仕事をしてきたか』

「働き方」の現在位置を確認

c_120218.jpg著者・海老原嗣生、荻野進介
中央公論新社、定価880円+税

 

 戦後の動乱期から格差に揺れる現代までを“人事を変えた名著13冊”によって概観する力作。しかも、名著それぞれにつき「ダイジェスト」「書評=著者への問いかけ」「著者からの返信」という3部で構成し、立体的に論点を引き出す贅沢な編集を試みている。

 戦前からGHQの指導、高度成長期、安定成長期にかけては「職工制度」「電産型モデル」「職能資格制度」といったキーワードが並び、ここまでは歴史に沿って落ち着いて読める。しかし、90年代以降(バブル崩壊後)の整理に至ると読者の側もある種の緊張感を覚えるかもしれない。「失われた20年」を経て、今なお混迷が続き、決定打となる人事モデルも登場せず、恐らく歴史評価を下す段階にないからだろう。

 ややもすると学説(経済学・法学)、政治・行政のアナウンス、マスコミ論調などに振り回され、収拾不能に陥りがちなテーマを、深く丁寧に読みやすく切り分けていく著者らのガイドの巧みさには驚くほかない。しばし時を忘れてエキサイティングにページを繰ってしまうこと請け合いだ。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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