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2014年7月12日

【この1冊】「ヨーロッパを知る50の映画」

欧州の多様性がわかる代表的映画50作を紹介

c140711.png著者・狩野 良規
図書刊行会、定価2400円+税

 

 著者は大学院で欧州文化論を教える欧州文学・演劇・映画の研究者である。ハリウッド映画とは全く異なるヨーロッパ映画の代表的作品を通じて、欧州の多様性と面白さを説いている。

 13の国別に代表的監督の代表作品50作を取り上げているが、著者自身が「ヨーロッパ映画の面白さを語るプロモーション・ブック」と“豪語”するだけあって、どの紹介文も魅力的で、紹介された作品を無性に観たくなる。

 映画通の中には「当然取り上げられるべき作品が漏れている」と感じる人がいるかもしれない。確かに、本書では「映画は時代を映す鏡」という側面が必ずしも明確ではない。その辺は著者も心得ており、時代別の50作品を取り上げた続編を近く出す予定という。本書と続編を合わせて読めば「鬼に金棒」というわけだ。

 日本では「欧米」と一括りにされがちで、とりわけEU(欧州連合)の成立後は国別の多様性がなかなか見えてこない。その点、著者が言うように、映画という「窓」を通じて見直すと、改めてその多様性と魅力を実感できる。映画好きの人はもちろん、「普段、映画はあまり観ないが、欧州には興味がある」という人にもお勧めの1冊である。 (酒)

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