コラム記事一覧へ

2015年5月23日

【この1冊】『資本主義の克服―「共有論」で社会を変える』

社会変革の原理として制度やルールの「共有」を提起

c150523.png著者・金子 勝
集英社新書、定価720円+税

 

 多くの経済学者が安倍政権に接近する中で、著者はアベノミックスに批判的な数少ない経済学者の1人。

 著者は「アベノミックスなる経済政策は、2年間の目標数値を達成できず、明らかに失敗している」としたうえで、「経済成長か脱成長か、規制緩和中心の成長か、所得再配分による格差是正かという20世紀的な古い対立軸が相も変わらず繰り返されていることが、一層、未来の見えない閉塞感を強めている」として、「現実の社会を変える原理」として「制度やルールの『共有』と言う原理」を提起する。

 この「新しい共有論は、より平等性を高めながら自由を創り出し、社会の多様性を保持することを価値基準として、歴史的・時代的変化に応じて、機能不全に陥った制度やルールを新しく創造していくことを意味する」と説明しているが、その具体的イメージは必ずしも明確ではない。

 さらに、著者は技術的な発展を重視し、「クラウド・コンピューティングと情報通信技術の発達を背景にした、産業構造の地域分散ネットワーク型への移行によって、地域民主主義は現実性を与えられ、小手先の地域活性化ではなく、本当の意味での地域の自律性を生み出す基盤となっていく」とも述べているが、技術的な発展がなぜ「地域の自立性」を生み出すのかなど、関係も必ずしも明確ではない。

 基本的な論点に不明瞭な部分があることは否めないが、現状の問題点と「資本主義の克服」を考えるうえでは、一読に値しそうだ。 (酒)

PAGETOP