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2015年12月19日

【この1冊】『小さな会社の幹部社員の教科書』

人気セミナーのポイントをまとめた実践本

c151219.png著者・井東 昌樹
日経BP社、定価1600円+税

 

 著者は大手都市銀行に9年間勤務した後、幾つかの中小企業再建に奔走し、現在は研修会社の取締役・営業本部長。また、「中小企業のための経営幹部講座」というセミナーを企画、講師も務めている。このセミナーは3日間で1人31万5000円〈税込・一般価格〉という高額にもかかわらず、「満員御礼」が続く人気を誇り、そのポイントをまとめたのが本書だ。

 巷にはハウツー本が溢れ、有名経営者や専門家による経営指南本が次々に出版されているものの、そのほとんどが実際の仕事には役立たないのに対して、本書は著者が実体験に基づいて作成した実践ツールとその活用法を惜しげもなく公開しており、現場に役立つ情報が満載されている。

 従って、時間のない人は、第4章の「幹部社員の3条件を磨く実践講座」を読むだけでも意味があろう。ここで言う「3条件」とは、「戦略的視点」「マネジメント力」「数字力」であり、類似書でもおなじみの「ありふれたこと」だが、本書が決定的に異なるのは、これらを「磨く」方法を具体的、実践的に説明している点。特に、著者が自ら考案し、現在も使っているツール(その多くは簡単な表である)がすぐにも使える形で公開されている点は注目だ。

 例えば、「計画書」には具体的数字と「何を(What)」「いつ(When)」「誰が(Who)」「どのように(How)」実施するかを明確にすることが必要不可欠と説きながら、これらを明記する「施策展開表」を例示している。「役に立たない」経営指導書に失望した経験者には一読を勧めたい。 (酒)

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