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2026年3月19日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」319・被扶養者認定における年間収入の取り扱いQ&A

Q 社会保険の被扶養者の認定基準の変更についてQ&Aが出たと聞きましたが、具体的にはどのような内容ですか。

koiwa24.png 312回でも触れましたが、令和8年4月1日から被扶養者の認定における年間収入の取り扱いが変更されます。年間収入130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)収入要件について、現在は被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入によって判断されていますが、4月1日以降は「労働条件通知書」などの労働契約の内容が分かる書類に記載のある賃金から見込まれる年間収入によって判断されることになります。

 具体的な内容については、「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」(令和7年10月1日、保保発1001第3号・年管管発1001第3号、厚生労働省保険局保険課長及び厚生労働省年金局事業管理課長通知)が通知され、同日付で実務取り扱いをめぐるQ&Aが示されていますが、さらに令和8年3月9日にQ&A第2版が公表されました。今回は、Q&A第2版で追加された点を中心に、4月1日以降の実務の留意点について整理したいと思います。

 (1)年間収入130万円未満の要件は、原則として労働条件通知書等の労働契約の内容が確認できる書類によって確認されることになり、そこで規定される時給・労働時間・日数等を用いて算出した年間収入の見込額が130万円未満であるかどうかで判断し、臨時収入は年間収入の見込額には含みません。ただし、シフト制や契約期間1年未満など労働契約内容による年間収入の判定ができない場合には、従来どおり給与明細書、課税(非課税)証明書などで年間収入を判定することとなります。

 (2)認定対象者が複数の事業所に勤務している場合には、それぞれの事業所の通知書等の提出を求めた上で、年間収入の見込額を合算して年間収入を判断することになります。ただし、一部の事業所の通知書等しか提出がない場合など、提出された通知書等のいずれかで労働契約内容による年間収入を算定できない場合は、従来どおり給与明細書、課税(非課税)証明書等により年間収入を判断します。

 (3)被扶養者の認定は、通知書等と「給与収入のみである」旨の申し立てに基づいて行い、「課税(非課税)証明書」によることはできません。「課税(非課税)証明書」は、あくまで前年度の所得を証明するものであり、今後1年間の給与収入を証明する根拠とはなりません。

 (4)被扶養者の認定後、臨時収入があったことで結果的に年間収入が130万円以上となった場合は、その臨時収入が社会通念上妥当である範囲である場合には、認定を取り消す必要はありません。ただし、臨時収入が支給されることを前提として、通知書等において賃金や労働時間が不当に低く記載していた場合などは、実態において臨時収入と評価することができないため、被扶養者の認定を取り消すことになります。

 (5)時間外労働が恒久的に発生したことで結果として年間収入が130万円以上となった場合、当初の労働契約に明確な規定がなく時間外労働の見込みがなかった場合には、認定時に瑕疵があるものではないことから、「被扶養者の認定の適否に係る確認を行った日」以降に、被扶養者を削除する手続きを取ることとなります。

 Q&A第2版では、昨年公表された当初のQ&Aから変更されている箇所がいくつかありますが、とりわけ(4)(5)の論点については少し踏み込んだ変更・追加がなされていると考えられますので注意する必要があります。4月1日の取り扱い変更に向けて、万全の実務対応を取れるようにしたいものです。

労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いに係るQ&A(第2版)について(令和8年3月9日、厚生労働省保険局保険課、厚生労働省年金局事業管理課、事務連絡)


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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