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2016年3月 5日

【この1冊】『家族という病』

「家族とは何か」を考えさせる体験的家族論

c160305.png著者・下重 暁子
幻冬舎新書、定価780円+税

 

 本書は2015年の新書年間ベストセラー第1位。著者はNHKの女性トップアナンサーとして活躍後、民放キャスターを経て文筆活動に入った著名人であり、著作はエッセイ、評論、ノンフィクション、小説など多岐にわたる。

 その著者がこれまであまり公表して来なかった自らの家族を題材にしながら、「家族の難しさ」について具体的に描きつつ、「家族とは何か」を読者に考えさせることに成功している。

 具体的には、「本当はみな家族のことを知らない」(序章)と問題提起し、「家族は難しい」(第1章)と説き、その病的な症状を「家族という病」(第2章)として摘出し、「家族を知る」(第3章)必要を説き、故人となっている著者の父、母、兄への手紙を抜粋して「旅だった家族に手紙を書くと言うこと」(第4章)にまとめている。第4章を読むと、著者の家族に対する思いや優しさが伝わって来て、読者も優しい気持ちにさせられる。

 多くの人々が何らかの「家族の問題」を抱えているが、本書には著者の知性、優しさ、品格が行間にあふれており、家族関係に悩む人は大いに癒されるはずだ。それが、本書をベストセラーに押し上げた基本的理由だと思われる。

 あえて言えば、本書では「個人主義」対「家族主義」というステレオタイプの視点のみが目立ち、現在、介護問題などで緊急課題になりつつある「相互扶助共同体としての家族」の再構築の必要性といった視点が全くない点には不満が残る。 (酒)

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