オリンピック取材で記者や写真部の最大の心配事は、何だと思いますか。交通手段や宿泊先の予約の多少のトラブルや体調不良ではありません。それらは、交渉か気合いで“何とかなる”ものであり、大半の取材班は持ち込んだ通信機材や現地の通信回線が万全かどうか。それを開幕から閉幕までの約1カ月間にわたりずっと気にかけている。
新聞でも放送でも、現地からの原稿と写真や映像を日本に送れない事にはどうしようもない。現地取材に伴う出張関連経費に相応の支出をしている媒体会社としては、現地の様子を購読者や視聴者に届けられないなんて「あり得ない」こと。取材班も心得ていて、テスト通信や送信が完了するまでは現地入りしても気が気でない。
「何で写真が送れないんだ、ふざけんな」「回線設定にミスがあるんじゃないか」――。開幕直前のプレスセンター内では、記者と日本にある本社機材担当者との電話越しの怒号が飛び交う場面もちらほら。異国の地に到着して間もない取材班の不安とイライラが、この通信機材の不具合でさらに増幅されるのだろう。
経験上、これには相応の理由、というか原因がある。そもそも、取材班に機材の細かな仕組みやメンテナンス、修復に長(た)けた専門部署の社員が複数同行できるのは、よほど資金力のある一部の媒体だけ。誰でも名前を聞いたことがある媒体でも、予算上または媒体ごとの「取材定員」の問題もあり、潤沢な陣容を送り込めない。そして、日ごろから執筆の方に専門性が高く「機材に疎い」顔ぶれが多いため、現地で悪戦苦闘が始まるのだ。
ドタバタの末に何とかテスト送信が完了し、安堵の表情になっていくそれぞれの取材班たち。そうした光景は、プレスセンターのオープニングの“定番”になっている感じだ。そして開幕を迎えるのだが、ここで終わりではない。媒体が契約している通信会社ごとの電波の得意・不得意なエリアの有無や、機材の故障などが起きないかと閉幕まで緊張が続く。そして、大型機材ばかりに気を取られていると、最終の連絡手段として最も大切な携帯電話の充電マークが残りわずかというドジを踏んでしまうことも。出国前の周到かつ入念な準備が重要なのは間違いない。






















