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2018年7月17日

【書評&時事コラム】『日本の醜さについて~都市とエゴイズム』

日本人には本当に協調性があるのか

c180717.jpg著者・井上 章一
幻冬舎新書、定価800円+税

 

 今年は「明治維新150年」とあって新たな日本論、日本人論が盛んだが、本書もその一種と言っていいだろう。テーマは都市建築、都市景観から見た日本文化論だ。

 ビジネスや学問などの分野が典型だが、一般に知られているのは、欧米人は個人主義的で自己主張が強いが、日本人は集団主義的で協調性を重んじる。これは明治以降、欧米流の近代化に対して、日本の近代化が不徹底だった要因の一つと考えられているが、著者はこれに疑問を投げ掛ける。

 なぜなら、欧州の都市景観は保守的で規制でがんじがらめなのに対して、日本は近代建築があふれ返り、無秩序。欧州の美しい街並みはその結果だが、日本には同じ意味で美しい街並みの都市はない。行政や建築業界などが求める効率一辺倒の発想が、その根底にあるためと結論づけている。

 本書には、そうした具体的事例やエピソードがふんだんに盛り込まれており、発想の転換の面白さが伝わってくる。中には歴史的事実を単純化し過ぎている、と思われる部分も散見されるが、ユニークな日本論であることは確かだ。(俊)

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