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2018年12月18日

【書評&時事コラム】『新版 障害者の経済学』

福祉偏重の障害者政策に一石

c181218.jpg著者・中島 隆信
東洋経済新報社、定価1600円+税

 

 国などの行政機関による障害者雇用の大量水増し問題は、法定雇用率の達成という「数合わせ」しか頭にない政府の貧弱な姿勢をさらけ出した。しかし、それは政府だけの問題だろうか。

 本書は障害児を持つ経済学者が、障害者雇用制度の問題点を経済学の観点から分析、批判したユニークな著作。2006年に第1弾を世に出して注目されたが、その後、障害者の就労を取り巻く環境が大きく変化したことから、「新版」として再び世に問いかけたものだ。

 「なぜ障害者の経済学なのか」から「障害者は社会を映す鏡」まで8章で構成。障害者の就労支援組織や企業の特例子会社などへの豊富な取材を基に、障害者就労に対する社会の誤った見方、「戦力」としての就労方法などを解説、提案している。

 一方、雇用政策の基礎となる障害者統計がはなはだズサンで、「エビデンス(科学的根拠)に基づいた分析ができない」と嘆くあたり、あくまで学者らしい冷静さが貫かれおり、障害者政策の根本部分に切り込む鋭さも光る。(俊)

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