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2019年3月 7日

中宮伸二郎社労士の「労務の心得」10・36協定の起算日

Q 36協定には対象期間、有効期間2つの期間がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。

nakamiya03.png 有効期間と起算日を36協定に記載し、対象期間は記載しないため対象期間を意識することがないのですが、対象期間は時間外労働の管理上重要なものです。
 対象期間は時間外労働時間数や特別条項の回数が上限規制の範囲内であるかどうかを判断するための期間です。限度時間年360時間、特別条項がある場合の年720時間を図るためのものであることから、対象期間は必ず起算日から1年間となります。また、上限規制の実効性を確保するために原則として起算日の変更は認められません。

 有効期間は、36協定が効力を持つ期間です。1年間の延長時間を協定しなければならないことから有効期間は最短でも1年間となります。1年を超える有効期間を定めることは禁じられていませんが、36協定を定期的に見直す必要があることから有効期間は1年間とすることが望ましいとされています。このような事情から多くの企業で対象期間と有効期間は同一期間となっています。

 2019年労基法改正以前は、対象期間の起算日の変更について明確な規定は見つかりませんが、今般の改正に伴う通達(平成30年基発1228第15号)では、対象期間の途中で36協定を破棄、再締結する場合であっても原則として変更することはできないとしています。派遣先の要請により、当初の36協定を破棄、再締結する際には当初の起算日を用いなければなりません。

 どうしても起算日を変更する必要がある場合は、新しい基準日を設けることも認められていますが、その場合、当初の36協定、再締結した36協定両方の1年間延長時間と特別条項の回数を遵守しなければなりません。すなわち再締結によって上限規制を潜り抜けることはできないということです。

(中宮 伸二郎/社会保険労務士法人ユアサイド 代表社員)

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